コピー解禁

3/5
前へ
/5ページ
次へ
彼が必死に考えて選んだ大学を、あたしはただ真似して受験して、合格してしまった。 まったく同じ学校で、キャンパスライフを始めてしまい、しかも、単位も、ゼミの成績も、サークル活動も、バイトのシフトも、真似してるあたしのほうが、何でもちょっとだけマシにこなしてしまうー。 そのうえ、彼が何を思いついても、またぜんぶ真似する。 上書き彼女のあたしは、決して彼から離れようとしなかった。 彼の動きや、考えていることをいつも気にして、全部コピーする。 彼は息苦しくて、仕方がなかっただろう…でも、ほんとうに彼のことが好きで、一緒にいたかっただけ…もしかすると「彼」になりたかったのかも知れない… この喫茶店で怒りをぶつけられた後も、あたしは彼を離れなかった。 真似して始めたかもしれないけど、あたしがちゃんと作った、あたしの世界だった。彼を真似してやってきたこと、みんな上手くいっていた。成績も順調、サークルも楽しい、バイトもがっつり稼いで。 同じことをしてるのに、彼があたしより上手くいかないのは…もしかすると、純粋にあたしの方が、うまく出来るということかも知れない。 そして彼はあたしの前から姿を消してしまった。 学校に来なくなり、サークルもバイトも辞めた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加