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彼が必死に考えて選んだ大学を、あたしはただ真似して受験して、合格してしまった。
まったく同じ学校で、キャンパスライフを始めてしまい、しかも、単位も、ゼミの成績も、サークル活動も、バイトのシフトも、真似してるあたしのほうが、何でもちょっとだけマシにこなしてしまうー。
そのうえ、彼が何を思いついても、またぜんぶ真似する。
上書き彼女のあたしは、決して彼から離れようとしなかった。
彼の動きや、考えていることをいつも気にして、全部コピーする。
彼は息苦しくて、仕方がなかっただろう…でも、ほんとうに彼のことが好きで、一緒にいたかっただけ…もしかすると「彼」になりたかったのかも知れない…
この喫茶店で怒りをぶつけられた後も、あたしは彼を離れなかった。
真似して始めたかもしれないけど、あたしがちゃんと作った、あたしの世界だった。彼を真似してやってきたこと、みんな上手くいっていた。成績も順調、サークルも楽しい、バイトもがっつり稼いで。
同じことをしてるのに、彼があたしより上手くいかないのは…もしかすると、純粋にあたしの方が、うまく出来るということかも知れない。
そして彼はあたしの前から姿を消してしまった。
学校に来なくなり、サークルもバイトも辞めた。
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