遡ること二ヶ月前

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遡ること二ヶ月前

 僕の家の近くには大きな公園がある。読書をするには最適な場所だ。バイトの帰りや、シフトのない日はよくそこを利用している。たくさんあるベンチの中でもお気に入りがあり、そこに座っての読書は僕のささやかな楽しみである。  そばには名前の知らない立派な木が立っていて、それが目印だ。  二ヶ月前のある平日、午後の講義は友達に代返してもらい、仮病を使って授業をサボタージュした。学内の喧騒に嫌気が差していたし、恋愛話は不得手だし。  友達には申し訳なかったけど、仮病なんか使う自分が悪い子のようで、少しだけ心が楽しくなった。  いつもの公園へと足をすすめる道すがら、見える景色さえも違って感じた──。    でも。  足早に辿り着いた公園は、多くの利用者で賑わっていた。そのほとんどが、幼児を連れた若いママさんたちで、いくつかのグループを作っていた。そのうちの一グループが僕のいつものベンチを占拠し、彼女たちの荷物置き場としていた。  せっかく初めて仮病までしたのに、空いてないなんて。僕はふと寂しい気持ちにかられた。    そんな僕に声をかけてきた人がいた。 「いつものベンチ、空きそうにないな」
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