最初の出会いは半年前

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 壮年男性ブチギレる!  あぁぁ、まずい!  僕のターンが回ってこないばかりか、完璧な手札さえも無視して攻撃してくる、一番いやなタイプだ。  逃げたい。  僕はいつも損な役回りばかりなんだ。  店長不在のいま、僕以外のスタッフはみんな年下の女の子。こんな時ばかり男の子が矢面っておかしいよね。ここにいるスタッフの女の子たちは割と強い子が揃ってる。だからここは僕じゃなくたって……。  あぁぁ、大きい声を出さないでよ!  僕の心の逃避が相手を逆上させている。  とそこへ、 「失礼致します、私、本社から抜き打ちで視察に来ていた者です。まずは落ち着いてください」  え?  あのお客さん本社の人だったの?  救世主っているんだなぁ。  救世主=加藤さん、これが初めての出会いだったんだ。  颯爽と現れた救世主は、折り目正しい濃いグレーのスーツを嫌み無く着こなしていた。  清潔感があり、歯切れのよい物言いが心地よかった。  彼を前に壮年クレーム客は、誇張して僕の悪口ともとれる文句を言ってのけた。  もうポテト云々ではないことが実に悔しかった。 「話は分かりました。しかしながら──」  加藤さんは一旦そこで話を区切ると、一度僕の目をチラと見た。  胸がドキンっとするってこういうことなのか?  オーバルタイプのメガネから覗かせた一瞬の視線で、僕の顔が紅潮したのを覚えてる。  そこでフッと笑んだ彼が続ける。 「しかしながら、防犯カメラの記録から判断するに、お客様は三十分ほど放置した商品をお持ちになり、そして怒ってらっしゃる。 ──何故ですか?」
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