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壮年男性ブチギレる!
あぁぁ、まずい!
僕のターンが回ってこないばかりか、完璧な手札さえも無視して攻撃してくる、一番いやなタイプだ。
逃げたい。
僕はいつも損な役回りばかりなんだ。
店長不在のいま、僕以外のスタッフはみんな年下の女の子。こんな時ばかり男の子が矢面っておかしいよね。ここにいるスタッフの女の子たちは割と強い子が揃ってる。だからここは僕じゃなくたって……。
あぁぁ、大きい声を出さないでよ!
僕の心の逃避が相手を逆上させている。
とそこへ、
「失礼致します、私、本社から抜き打ちで視察に来ていた者です。まずは落ち着いてください」
え?
あのお客さん本社の人だったの?
救世主っているんだなぁ。
救世主=加藤さん、これが初めての出会いだったんだ。
颯爽と現れた救世主は、折り目正しい濃いグレーのスーツを嫌み無く着こなしていた。
清潔感があり、歯切れのよい物言いが心地よかった。
彼を前に壮年クレーム客は、誇張して僕の悪口ともとれる文句を言ってのけた。
もうポテト云々ではないことが実に悔しかった。
「話は分かりました。しかしながら──」
加藤さんは一旦そこで話を区切ると、一度僕の目をチラと見た。
胸がドキンっとするってこういうことなのか?
オーバルタイプのメガネから覗かせた一瞬の視線で、僕の顔が紅潮したのを覚えてる。
そこでフッと笑んだ彼が続ける。
「しかしながら、防犯カメラの記録から判断するに、お客様は三十分ほど放置した商品をお持ちになり、そして怒ってらっしゃる。
──何故ですか?」
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