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そして、今日。
半年前には偶然の出会い。二ヶ月前は必然の出会い……。今日の僕は何然になるかな。
僕は自分を変えたかった。公園で再会できたあの日にハッキリ分かったんだ。
まずは自分改革だってことを。
だから、
気弱な自分を変える、
バイトと勉強をがんばる、
それらを自信につなげる。
少しでも憧れの彼に近づけていたらいいとか、少しでも認めてもらえたら嬉しいとか、そんな邪念だけど、自信をつけた自分になりたかった。
次に加藤さんに会えたとき、胸を張って顔を合わせたかったから。
あの日、彼を追いかけずに離れた時間をもったのは、『自分の本質を確かめたかった』から。
弱い自分も情けない自分も受け入れ、強い憧れを抱いたあの思いはなんだったのか。
憧れに加算される想い、それが恋というものなのか。
僕はどっちなんだろうと、自分と向かい合い確かめる時間がほしかった。
そして分かったんだ。
男同士でも、一人間として彼を想う自分がちゃんといるんだと。
それが恋なんだと。
だから今日この休日は早く出かけて彼を待つ。
そうしなきゃいけないと虫の知らせがある。だって今日は僕の誕生日だから。こじつけだって、なんだって構わない。僕の勝手で僕の自由だ。
何だって動かなきゃ始まらない。
僕はお気に入りの文庫本を携え、暑い日差しを浴びながらも涼やかな顔で家を出た。
たった一度話しただけの彼。自分の気持ちともちゃんと向き合った。
公園までの道程は、今日会える予感で胸の高鳴りが騒がしかった。
約束なんてしてもいないのに、確信を持って歩く自分を想像できてたろうか。いや、できていなかったね、彼と会う前までは。
途中の交差点では、ようやく賑わいを見せ始めた車が行き交っている。青に色を変えた歩行者信号は、僕にいざ進めと誘導している。
──あ、加藤さん!
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