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動画の猫は徐々に元気を取り戻しているのではない。しだいに飢えて痩せ、傷つけられ、戸塚に怯えていたのだ。
「あなたは動画の保護猫が、どこかで死んで見つかった猫と同じ猫だと気づかれないように、あえて特徴のない姿の猫を標的に選んでいたんですね」
真相を突きつけたが、模造品の笑顔は崩れることがない。今となってはその笑顔がおぞましく見えた。
「あなたの邪推でしょ。その妄想力、お見事としか言いようがないわ」
「誤魔化すつもりなんですね」
「そうは言っても、何も証拠がないじゃない」
戸塚は可笑しそうに笑い飛ばした。
すると前田の背後から西成が姿を現した。両手には箱を抱えている。
「証拠なら、ここに生き証人がいますよ」
地面に置き箱を開くと、ポンポコがひょっこりと顔を出す。
数秒、辺りを見回していたが、戸塚と目が合うやいなや警戒心をあらわにし、全身の毛を逆立たせて威嚇した。
「これでもとぼけるつもりですか? 猫は悪霊を視て毛を逆立てるんですよね。あなたはまさに、猫にとっての悪霊でした」
西成の鋭い視線が戸塚の本性を突き刺すと、戸塚の表情が崩れていく。自白ともとれる、醜い歪曲の顔。ついに仮面が剥げたのだ。
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