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訣別
その後、前田は西成とともに事の顛末を警官に説明した。
警察には猫の不審死情報が多数寄せられていたらしい。
前田は戸塚が警察に連行されるさまを見届ける。
ポンポコは野良猫たちと呼び合うように鳴き声をあげていた。
いつのまにか箱から抜け出して、猫の群れに紛れ込んでいる。
猫たちがポンポコの周りに集まっている。そのうちの一匹がポンポコの体を舐め始めた。皆、心配していたらしい。
仲間との再会を果たしたポンポコは、前田に向かって小さな鳴き声を上げて、猫たちと夜闇の奥に消えていく。
「ポンちゃん、元気でね」
見送ってから振り返ると、西成は忽然と姿を消していた。
前田は思う。先生は私に強がりの演技なんかさせないために、いなくなったのだと。
それから前田は愛猫との別れにひとり、声を殺して泣き始めた。
了
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