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それから前田は母親を説き伏せ、自宅で猫の面倒を見るにいたった。猫はポンポコと名付けられた。
猫の飼育法を学び、戸塚のアドバイスを役立て、懸命に世話をした。
「ポンちゃん、怖がらなくても大丈夫だからね。ほぉーら、よしよし」
「ムニャーッ!(怒)」
丁寧に手当をした甲斐があって、しだいにポンポコの傷は癒え、十日もするとすっかり回復した。
愛情を感じてくれたのか、日に日に警戒心を薄めてゆき、寝床の段ボール箱から出て家を探検するようになった。
前田の目前でご飯を食べるようになったし、手を触れても怒らなくなった。
肉球にハート型の斑点を見つけた前田は愛らしい模様だなと、それがいたく気に入った。
「ところで前田さん、猫の様子はどうですか」
仕事中、ふと西成が尋ねてきた。猫の世話がすっかりマイブームな前田は機嫌よく答える。
「少しずつですけど心を開いてくれているみたいなんです」
「それはよかったです。でもあの猫、家で飼い続けるつもりなんですか」
「正直、どうしようか迷っています。あの子にとっては野生の方が幸せかも、って思って」
「たしかに野良には野良のプライドがありますからね。しかし野良猫と仲良くなれるなんて、前田さんは動物を世話する才能があったんですね」
「いえいえ、戸塚さんのご指導のお陰です。――ところで彼女の配信動画見ましたか?」
「いや、まだです」
「すごかったです、これなんですよ~」
前田は仕事用のノートパソコンで動画サイトにアクセスし、目的の動画を見つけて再生する。パソコンを西成の目の前に差し出した。
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