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悪霊
翌週の月曜の朝、前田は意気揚々と出勤してきた。西成が尋ねるまでもなく自ら切り出す。
「西成先生、ポンちゃんが肉球をモミモミさせてくれたんです。肉球のハートマークが可愛いくってたまりません! 毎日マッサージしてあげたいです」
「おやおや、天職を見つけたようですね。まさか身の振り方を考えているとでも?」
そう聞かれてドキッとする。せっかく手にした職を簡単に手放せるはずがない。
「いえそんな、これからも西成先生の秘書を務めさせていただきます!」
笑顔で繕ったが、西成は眉間にしわを寄せたままだ。
「実は気になったことがひとつあります。戸塚さんは保護する猫を選り好みしていますかね」
「は? それはどういう意味ですか」
「いや、動画では黒猫と白猫ばかり保護しているなぁ、と思いましてね」
「そうなんですか?」
前田はスマホを取り出して動画を確認する。
「あっ、ほんとですね」
言われてはじめて気づいた。たしかに保護された猫は皆、モノクロームだった。
「ところで前田さん、新しい動画、見ましたか」
「動画? あっ、最新のが配信されたんですね。まだですけど……」
よく見ると二日前に投稿された動画があった。ポンポコの世話に夢中だったせいで、動画のことが頭から抜けていた。
「ちょっと見ていただけますか」
「仕事中ですけどいいんですか?」
「もちろんです。大事な情報収集ですから」
「はぁ……」
西成から動画の視聴を勧めてくるなんて妙だなと思いつつ、黙って動画を再生する。
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