十四.

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十四.

「さぁ、これはお前の指輪だよ、セラ。 愛しい妹」 女は宙に吊られたセラの手を取り指輪を差し出すが、はめるべき指が無いことに気付くと一瞬、眉間(みけん)(しわ)を寄せ、しかし微笑んで包帯の上から手を撫でた。 包帯が黒い光に包まれ崩れ落ち、傷一つ無いセラの手が現れる。 「ヴィミル、お姉様……?」 ふいに戻った指先の感覚に、指輪がはめられた感触に、セラが声を(しぼ)り出す。 「そうさ、迎えに来たよ、セラ。 さぞかし痛かったろう、つらかったろう。 まったく人間はおぞましいものだな、(みにく)く、(けが)らわしい。 だが、お前は愛しく可愛い、私の大切な妹だ」 「あぁ、お姉様……! 会いたかった……! 助けに来てくれるって、信じてた……!」 セラが必死にその手で女の手を探り握り締める。 「だからお前も私と共に魔女になろう。 こんな不快で呪わしい世界など、一緒に滅ぼしてしまおうじゃないか。 なぁ?セラ」 セラの小さな手を握り返しながら微笑む女の頭が真っ二つに割れ、牙の並んだ大きな口を開けた。 「どういうこと? 助けてくれるんじゃないの? 私も魔女になるって、何?」 目の見えぬセラが(つか)んだ手に力を込める、が、 「何も怖がることなんて無いんだよ。 愛しい妹と一つになりたいっていう、ちょっとだけ偏狂(へんきょう)なお姉様の我儘(わがまま)さ」 女の大口は一瞬で周囲の器具や天井ごとセラを丸呑(まるの)みにして閉じ合わさった。 「さ、行こうか。 黒い宴の始まりだ」 女の背から巨大な黒い翼が生えると天井を突き破り屋敷を破壊して、その瓦礫(がれき)の中から女は飛び立ち、大きく吐いた息からは無数の小さな魔法陣が黒雲のように広がって空を覆い尽くしていった。
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