13人が本棚に入れています
本棚に追加
一.
その日、その丘の上で、黒い衣服に身を包んだ幼い少女は、生い茂った草むらの中に、泥や擦り傷にまみれて汚れた、同じ年頃の少女が横たわっているのを見付けた。
そっと抱き起こすと、少女は苦しそうに呻きながらも目覚め、驚き身をこわばらせ逃れようとしたが、黒い少女は優しく温かく彼女を抱擁し、大丈夫、大丈夫、と随分の間、なだめた。
やがて腕の中で落ち着きを取り戻した彼女に、黒い少女は静かに尋ねる。
「私はヴィミル。あなたは?」
「……私は、セラ……。
でも、あの……あなたは、本当に……大丈夫……?」
ひどく怯えながらも、彼女は答え、尋ね返した。
最初のコメントを投稿しよう!