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十五.
呑み込まれたセラは、自分が魔女ヴィミルであるかのように世界の惨状を引き起こし眺め高笑いながらも、真っ暗な闇の中に溶け込んでいるかのような自分自身の存在も感じていた。
そして、涙を落とす。
涙は黒薔薇の指輪に落ち、じゅっ、と熱を放った。
ヴィミルが一瞬、違和感を覚えて首を傾げる。
「お姉様……一緒になれて、嬉しい……」
セラのか細い声が、聞こえたような気がする。
「だけど私、世界を滅ぼしたいなんて思ってない……。
私はただ、お姉様と仲良く幸せに暮らしたいだけ……」
「なんだ?セラ?」
腹の中に、セラと共に熱い何かを感じたヴィミルが顔をしかめた。
「お姉様、愛してる。
塔での暮らしが何か少しおかしくて、きっとみんなで家族ごっこを演じてるんだろう、なんてことはわかってたよ。
お父様もお母様も、笑っている以外の表情をしないからとても変だったもの。
だけどそんなのはどうでもいいの」
ヴィミルの腹がさらに熱を帯び、白く輝き始めた。
「セラ、一体、何を……!」
「世界なんてどうでもいいの。
幸せだったの。
お姉様との暮らしが本当に大好きだったの。
だから私の願いは唯一つよ。
私とお姉様の二人で、二人きりのおうちで、永遠にその幸せに溺れていたいの」
熱く白い輝きはやがてふいに腹を突き破り溢れ出て、その光の中から二本の腕が生えヴィミルの顔を愛おしく包み込んだ。
その指には黒薔薇の指輪がまばゆく輝く。
そしてさらに現れた頭は、
「セラ……!」
「ヴィミルお姉様!」
成長し大人の姿になったセラであった。
「これは……まさか、指輪に流れ込み蓄積された魔力に、お前の強い思念が絡み合い、私の腹の中で増幅されて……お前自身が単独の魔女となったというのか……セラ!」
「ふふ……お姉様……私と一緒に、誰もいない邪魔されない二人だけの幸せな世界で、幸せに暮らしましょうよ」
驚きセラを突き放そうとするヴィミルだったが、頭を包み込んだセラの腕が、ゆっくりとヴィミルに溶け込んで、共に白く崩れ落ちていく。
「やめろ、違う、そういうのじゃない!
あんなぬるい家族ごっこは、そうさ、偽りで、私が本当にやりたかったことなんかじゃない!」
「ふふ……それでも、いいの。
それならそれで、私もお姉様も、一緒に永遠に演じ続けましょう。
幸せな二人の日々を……」
顔を近付けたセラが、拒むヴィミルを押さえ付けそっと口づけると、一瞬にして二人の体は溶け合い激しく光を放ち、消滅した。
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