13人が本棚に入れています
本棚に追加
三.
ヴィミルも両親も本当に優しく、塔の暮らしは質素で窮屈ではあったが、やがて少しずつセラは元気を取り戻し、幸せな日々を過ごした。
「セラ、あなたは私の大事な妹。
これをあげるわ。
私とお揃いよ、本当の姉妹だって、証」
ある日ヴィミルがセラに差し出したのは、ヴィミルの指にはめられているものと同じ、薔薇をかたどった黒い指輪だった。
「ペアリングだなんて、素敵……!
ありがとう、お姉様!」
右手の薬指に指輪をはめて天にかざしはしゃぐセラを、ヴィミルはしばし愛おしげに眺めていたが、しかしふと伏し目がちになり、
「それでね……。
少しおかしなお願いがあるんだけど、聞いてくれる?」
セラの顔を覗き込んだ。
「うん、何でも言って!
お姉様の言う事ならなんでも聞くよ」
「そう、ありがとう。
あのね、その指輪は普段は外して、この革紐で首から下げるとかしてて欲しいのよ。
で、指輪を付ける時は、なんていうかね、どんなに小さくてもいいの。
いたずら、そう、少しだけでも、人が困っちゃうような事をして欲しいの」
「えぇ!?
どうして?
そんなの……」
「人のお庭に小石を放り込むとか、そのぐらいでもいいのよ。
なんていうかな、ちょっとしたおまじないなの。
お願い、二人だけの秘密のおまじないよ」
ヴィミルは片目をつぶってみせた。
最初のコメントを投稿しよう!