13人が本棚に入れています
本棚に追加
七.
そんな日々がどれぐらい続いた頃か、また街へとお遣いに出たセラは、また幾つかのいたずらをしながら街を駆け抜けていた。
そして何気なく首を向けた横道の奥に、色とりどりの花が咲き乱れるのを見付け、
「うわぁ」
と駆け寄った。
「薔薇だ……こんなに色んな色の薔薇が、こんなにたくさん!
それに、とても大きなお庭に、大きなお屋敷……」
高い柵越しにしばらく見とれていたが、ふと自分の指に鈍く輝く黒薔薇の指輪に目を移し、
「そうだ、お姉様にこのお庭の薔薇を持って帰ろう」
小さな体を柵の隙間に滑り込ませ、薔薇園へと忍び込んだ。
身をかがめて薔薇の合間をすり抜けながら、
「黒い薔薇も素敵だけど、赤や黄色、ピンクの薔薇もとっても綺麗ね。
すごいお庭だなぁ。
一体どんな人が住んで……」
と顔を上げたその時、
「ちょっとあんた!
人んちの庭で何やってんのよ!」
鋭い少女の声がセラに突き刺さった。
最初のコメントを投稿しよう!