七.

1/1
前へ
/16ページ
次へ

七.

そんな日々がどれぐらい続いた頃か、また街へとお遣いに出たセラは、また幾つかのいたずらをしながら街を駆け抜けていた。 そして何気なく首を向けた横道の奥に、色とりどりの花が咲き乱れるのを見付け、 「うわぁ」 と駆け寄った。 「薔薇だ……こんなに色んな色の薔薇が、こんなにたくさん! それに、とても大きなお庭に、大きなお屋敷……」 高い柵越しにしばらく見とれていたが、ふと自分の指に(にぶ)く輝く黒薔薇の指輪に目を移し、 「そうだ、お姉様にこのお庭の薔薇を持って帰ろう」 小さな体を柵の隙間(すきま)に滑り込ませ、薔薇園へと忍び込んだ。 身をかがめて薔薇の合間をすり抜けながら、 「黒い薔薇も素敵だけど、赤や黄色、ピンクの薔薇もとっても綺麗ね。 すごいお庭だなぁ。 一体どんな人が住んで……」 と顔を上げたその時、 「ちょっとあんた! 人んちの庭で何やってんのよ!」 鋭い少女の声がセラに突き刺さった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加