Pと私のコイバナ

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 五人の夫の(そう)(りょう)は、ここまで語った中でも大活躍しているキーパーソン。彼なくして人が人らしく生きていくことはできません。  二番目の夫は、あまり目立たないけど穏やかに実力を発揮します。何となしの美しさを秘めていて、こっそりすんなり心に入ってくるしたたかさも持っていますね。  三番目の夫は印象的に柔らかい反面、危険な面も持っており、四番目の夫は活躍どころが限られていると嘆いていながら意外と勤勉な働き者で、五番目の夫は末っ子ならではの変幻自在ぶりが楽しい人です。  私は常々彼らの存在を誇らしく思っていましたが、先にご紹介した知らない人の都合により、予想外の立場に立たせてしまいました。彼ら五人はその地位と引き替えに、独立した大切なものを失くしてしまったかも知れません。  そろそろ、何のこっちゃ分からんわ、ええ加減にせえ、と仰りたい頃合いでしょうか。  ではずばり申しますと、私の五人の夫たちは、「は」と「ひ」と「ふ」と「へ」と「ほ」という名前でありまして、私自身は「(はん)(だく)(てん)」という()(づら)の悪い名前なのです。  昔々の時代にも、私こと「半濁点」は生きていました。ですが、文字を書くにあたり、私はあまり意識されず、同一音素の異音的な立場でした。存在はしていたけれど、目立たない女。つまり、地味子だったんです。
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