新聞部活動日誌⑥ 見る目がない(写真部)

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「部長。今度の取材に写真部が同行することになりました」 「そうか、ご苦労様」 いつもの新聞部の部屋。今日も二人しかいない部屋で、編集会議が開かれていた。 「ところで、部長」 「何だ」 「写真部って確か、コンクールに当選したことが一回もありませんよね」 「そうだな」 「どうしてなのですかね。こんなに良い写真を撮れているのに」 新入記者は一枚の写真を取りだした。そこには夕日をバックにして写っている山があった。 「おーどうしたんだ」 「写真部が無料で配布している写真の一つです」 「綺麗だな」 「はい、綺麗です。こんなに上手く撮れているのに、どうして当選しないのですかね」 「まぁ、我々には分からない世界があるのかもしれないぞ」 「うーん」 すると、部長は手を叩いてこう宣言した。 「よし。明日の取材同行際にそれとなく聞いてこい」 「良いのですか」 「但し、そこからどう話を膨らませるかはお前次第だ」 「分かりました」 「よし、決定」 一体、どんなカラクリがあるのか。明日の取材同行はそのことを知る絶好の機会だ。 絶対暴いてやる。 「ここですか、記者さん」 「はい。ここで野鳥が目撃されます」 学校の裏山の中腹部。そこに記者と写真部の部長がいた。 「ここから長丁場になりますが、頑張りましょう」 「はい」 潜伏すること一時間弱。 「あ、部長。あれ、鶯ですよね」 「え、あ、そうです」 見られているのが気づいていないかのように、優雅な野鳥が木に止まっていた。 「今です、部長さん」 「はい。バッチリ撮ります」 記者は部長のことを気に掛けつつ、鶯の監視を続けた。 すると、シャッター音が聞こえだした。連続して何回も撮っている音が聞こえてきた。 「あの、そんなに撮らなくて、大丈」 記者は固まった、部長が使用している機械を見て。 「……あの、部長さん。それって、まさか」 「ああ、これですか。最近の携帯って凄いですよね。こんな風にカメラにもなるなんて。以前のように写真のぶれもないので、うちの写真部員は全員これですよ」 「ああ、そうですか」 「しかも、これ、加工も出来ますよ。それを含めて、まとめて送ります」  説明を終えた部長は意気揚々として、野鳥の写真を撮り始めた。
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