新聞部活動日誌⑥ 見る目がない(写真部)

1/1
前へ
/1ページ
次へ
「部長。今度の取材に写真部が同行することになりました」 「そうか、ご苦労様」 いつもの新聞部の部屋。今日も二人しかいない部屋で、編集会議が開かれていた。 「ところで、部長」 「何だ」 「写真部って確か、コンクールに当選したことが一回もありませんよね」 「そうだな」 「どうしてなのですかね。こんなに良い写真を撮れているのに」 新入記者は一枚の写真を取りだした。そこには夕日をバックにして写っている山があった。 「おーどうしたんだ」 「写真部が無料で配布している写真の一つです」 「綺麗だな」 「はい、綺麗です。こんなに上手く撮れているのに、どうして当選しないのですかね」 「まぁ、我々には分からない世界があるのかもしれないぞ」 「うーん」 すると、部長は手を叩いてこう宣言した。 「よし。明日の取材同行際にそれとなく聞いてこい」 「良いのですか」 「但し、そこからどう話を膨らませるかはお前次第だ」 「分かりました」 「よし、決定」 一体、どんなカラクリがあるのか。明日の取材同行はそのことを知る絶好の機会だ。 絶対暴いてやる。 「ここですか、記者さん」 「はい。ここで野鳥が目撃されます」 学校の裏山の中腹部。そこに記者と写真部の部長がいた。 「ここから長丁場になりますが、頑張りましょう」 「はい」 潜伏すること一時間弱。 「あ、部長。あれ、鶯ですよね」 「え、あ、そうです」 見られているのが気づいていないかのように、優雅な野鳥が木に止まっていた。 「今です、部長さん」 「はい。バッチリ撮ります」 記者は部長のことを気に掛けつつ、鶯の監視を続けた。 すると、シャッター音が聞こえだした。連続して何回も撮っている音が聞こえてきた。 「あの、そんなに撮らなくて、大丈」 記者は固まった、部長が使用している機械を見て。 「……あの、部長さん。それって、まさか」 「ああ、これですか。最近の携帯って凄いですよね。こんな風にカメラにもなるなんて。以前のように写真のぶれもないので、うちの写真部員は全員これですよ」 「ああ、そうですか」 「しかも、これ、加工も出来ますよ。それを含めて、まとめて送ります」  説明を終えた部長は意気揚々として、野鳥の写真を撮り始めた。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加