新聞部活動日誌⑦ 的(弓道部)

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「お前知っているか」 「何を?」 「うちの弓道部、最近調子が良いらしい」 「えー、あの弱小部が」 いつもの部室でダーツに勤しみながら、二人の会話は続く。 「何でも、新しいカリキュラムを取り入れたら、メキメキと実力が上がっていったらしい」 「カリキュラムですか」 「そう。そして、今回、何と弓道部自ら取材の協力に名乗り出てくれた」 「珍しいですね」 「それだけ、このカリキュラムが特殊なのだと思う」 「成程。少しでも、多くの人に知っていって欲しいと」 「そうだ。お前も心してかかれよ」 「了解です」 今度の取材への決意を新たに投げたダーツの矢が真ん中へと吸い込まれていった。 「仇?」 「はい。我々はそれが分かったからこそ、強くなれたのです」 矢が的に次々と当たる音を背景に新入記者は弓道部の部長と向き合っていた。 「すみません。具体的に説明をお願いできますか」 「はい。端的に言うと、憎しみをぶつける対象を思い浮かべて、弓矢を放つ。それだけです」 「本当に端的ですね」 和と礼儀を尊ぶ弓道部にはあるまじき考え方だ。 「どうして、そんなカリキュラムを作ったのですか」 「型を知ったものこそが、型を破ることが出来る」 「はい?」 「我々は長い歴史の中で型を極めてきました。しかし、それを重要視するあまり、殻にとじこもっていたのです」 「なるほど」 「そこから抜け出し、新たなステージを踏み出すためには、大胆な改革がいる」 「それで、仇ですか」 「はい。実際に見ていただいたら分かりやすいと思うので、練習場へ行きましょう」 「随分と距離がありますね、的との」 「ここに来た人は皆そう言いますよ」 練習場には二十人近い部員がいた。心なしか、皆楽しそうな表情を浮かべていた。 「何か、イキイキしていますね」 「そうですね。あのカリキュラムを導入してから、雰囲気が変わりました」 「そうなんですか」 「何か、達成感とか使命感を感じられるようになりました」 「凄いですね」 これは是が非でもそのカリキュラムを確かめる必要がある。 「では、早速何ですが、そのカリキュラムを教えてください」 「分かりました」 部長の一声で何人かの部員が動き始めた。 弓を構える者と的の整備をする者に分かれた。 「それで、カリキュラムと言うのは」 「あれです。あの的の中央を見てください。それを見ていただけたら全てが理解できます」 新入記者は的の中央を見た。 そこには穴だらけになった弓道部顧問の写真が何十枚も張り巡らされていた。
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