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第九話 *
夜空に花火が上がりだした頃、泣きはらした顔で家に帰ったら母親に爆笑され、父親に慰められた。ほら、やっぱりね、舞ちゃんいい人いたでしょう? って母に言われる。その通りだった。いい人過ぎて静樹ごときが文句のつけようもない。大切な幼馴染の舞のことをお願いするまでもなかった。母親に笑われて父に励まされてるのに、腹は立たなかったし、自分の今の本当を初めて一つだけ両親に話せたことが嬉しかった。
舞と、舞の恋人に背を押された気がした。
静樹の全部を周りに話せなくても、たとえ嘘をつくことになっても、自分が好きだって思う人の前でだけは、誠実でいたいし本当のことを伝えたいと思った。
静樹が望む、当たり前の恋愛を旭としてみたいと思った。
「母さん。今日、旭さんのとこ泊まるから。さっきさ、舞ちゃんにふられたって言ったら、今から酒飲もうって」
「何、そのきったない泣き顔見られたの? ほんとアサちゃん、優しいわねぇ。行ってらっしゃい」
「うん。行ってきます」
自分がなりたかった完璧な自分じゃないし、親に本当のことが言えない罪悪感はあったけど、自分に正直になったら、大好きだった田舎でやっと息が出来た。
今すぐ、この汚くてカッコ悪い泣き顔を旭に見せたいと思った。
歩いているうちに自分の背後で上がる花火はクライマックスになり、大輪の花が夜空を彩る。街灯の少ない田んぼ道は、花火が上がるたびに色とりどりの光りに照らされて、その光の揺らめきを見ていると心がふわふわして落ち着かない。
旭の駅前の店は既に閉店時間で、表のガラス窓にはカーテンがかかっていた。けれど、隙間からは店の明かりが漏れていた。
呼び鈴を押すか迷っていると、ドアに手が当たった瞬間にカラカラとドアに付いた小さなカウベルが鳴ってしまった。意を決して中に入ると作業台に座っていた旭が振り向く。
「お、いらっしゃい」
旭は作業台の前で真っ白な生地を裁ちばさみで断裁しているところだった。その手が止まる。静樹が、この場所に来ると分かっていたのか、扉の前に立っている静樹を見ても旭は驚かなかった。
「当ててやろっか。舞ちゃんにフラれたんだろう? 顔、ひでぇの」
「うん」
「残念だったなぁ」
「俺、残念、じゃなかったんです。変でしょ。すごく、ほっとしてたんです」
「そっか」
ふりだったけど静樹に付き合ってくれた優しさは本物だったから。本当の自分を受け入れた上で友人でいてくれて嬉しかった。
「ちゃんと、舞ちゃんにお礼言ったのか? 静樹くんのつまらないお芝居に文句も言わず付き合ってくれたんだろ?」
その声は、近所のお兄ちゃんの声だった。いつだって、優しい声。
――友達出来たか? 静樹くんは、大人しいなぁ、友達と喧嘩くらいしたらいいのに。もっと、言いたいこと言ったら――。
昔、アサ兄に言われた言葉を思い出していた。
喧嘩したらいいのにって言ったアサ兄本人は、絶対喧嘩なんてしそうに見えなかった。あの時、続きになんて言ったのか思い出せない。
けれど、今回のことで静樹は分かった。大切に思う人の前では、喧嘩になっても、たとえ自分のことを否定されたとしても、本当のことを言いたいと思った。そうしないと後悔するから。それは、嘘を吐くよりも怖いことだと知った。
「突っ立ってないで、こっち来たら? 遊びに来てくれたんじゃないの?」
「俺、そっち行っても、いいんですか?」
「もちろん、おいでよ」
呼ばれて、嬉しくて、吸い寄せられるように作業台のある内側に回る。
子供の頃、本当の自分をさらけ出せなかった静樹に、アサ兄は色んなことを教えてくれた。それが、たとえ教科書に書いているようなことでも嬉しかった。静樹にとってアサ兄は、初めて自分を受け入れてくれた他人だったから。もちろん、静樹が気づいていなかっただけで、舞だって静樹を受け入れてくれていた。
もっとたくさん、いろんな人と本音で関われば良かった。傷ついて、落ち込んでも、情けなくても――言いたいことを言えたら、すっきりした。
アサ兄の言葉の続きは思い出せないけど、正解はいまの自分のなかにあった。
「舞ちゃん、好きな人が出来たんだって、だから今度結婚するって言われた」
「じゃあ、お祝いしてあげなきゃなぁ」
「はい。あの、旭さん何、作ってるんですか」
「んー? 真っ白なタキシード。俺、静樹くんにフラれたし、傷心の気持ちを製作にぶつけようと思って、ほら、静樹くんは、俺が作ったタキシード着てくれるんだろ?」
「き、着ない! そんな約束して、ない」
「えー、だって、静樹くんは、俺のこと振って、舞ちゃんと結婚するんだろ? あ、でも舞ちゃんは、他の人と結婚するんだっけ? 残念だねぇ。それで、静樹くんはどうしたいの?」
ニヤニヤにこにこと全てわかった上で、旭は静樹の顔を覗き込んでくる。舞が言うように、静樹は旭の前で自分の好きだって気持ちを隠せていないのだと思う。
全部初めてだったから、誰かを本気で好きになったのも、両思いになったのも、自分の一番恥ずかしいところをさらけ出したのも。全部、旭が初めてだった。
「旭さんは、いじわる、だ」
「静樹くんの方がひどいじゃん」
「……うん。知ってる」
酔っ払って好きな人を弄んで、ひどいのは自分の方だった。
「で、今日のご用事はなんですか? あ、酒飲む?」
静樹は首を横に振る。
「聞いて、欲しくて、旭さんに」
「なぁに?」
「俺、好きな人が、いるんだけど」
静樹が、そう言うと旭は、手に持っていいた裁ちばさみを作業台の上に置いて、静樹に向き直った。多分、自分の顔は真っ赤だ。
「誰だよ」
分かりきっていることでも、改めて本人に伝えなければと思ったし、伝えたかった。好きな人に好きだって伝えるだけのことなのに、緊張で声が震えている。
「あ、旭さんのことが、すき、です」
初めてした本気の告白は、声が裏返って、小さく、ひどく頼りないものだった。
「ん? よく聞こえなかったなぁ。ま、もう静樹くんの気持ちは、知ってるけどねぇ。でも、舞ちゃんと結婚したいんだよね」
「し! しない、出来ない。だって、俺は、旭、さんが、好きだから!」
「デカイ声。今度は、聞こえた」
にっと歯を見せて笑われる。
「好きなんです……どうしようもないくらい」
ただ、旭を喜ばせるためだけに、何度も好きだって言っている気がして、いたたまれなかった。けど、静樹が言えば言うほどに笑ってくれるから、伝わるまで伝えたかったし、こうやって口に出して自分の本当を話せていることが幸せだった。
「昔のアサ兄じゃないけど? もちろん丈夫で健康にはなったけどな。再会しても気づかれないくらい見た目変わったし、それでも、いいの?」
満たされない静樹の思いは、いつの間にか、過去の思い出に、恋に、恋していた。
「その……アサ兄は、綺麗な思い出だから、ダメです」
「あ? ダメってなんだよ」
「だって」
近づいてきた旭の額が自分の額に当たり、至近距離で見つめ合っていた。熱っぽい自分の瞳は緊張と期待でゆらゆらと揺れていた。
「ふぅん。じゃ、綺麗な静樹くんの思い出、俺が、今から汚してやろうか?」
「旭さんは、旭さんだから、汚れたりしないです」
「そっか、それ聞いて安心した。嬉しい。ね、付き合ってくれる? 静樹くん」
返事をするように、ぎゅっと目を閉じたら、目の前で小さく笑う空気を感じた。
頭の後ろに手を回されて、唇同士がくっついた。それがキスだって理解した瞬間に、舌が絡んでいた。自分たち二人しかいない明るい店内で、舌が絡む水音が聞こえるようなやらしいキスに頭がくらくらする。前のように酒も飲んでいない素面の頭なのに酔っているみたいだった。
身体の力が抜けて座っている旭の肩に抱きつくようにして不安定な姿勢でお互いの唇を求めあっていた。全然足りなかった。
静樹がしたかった性的なことは、酒に酔ったあの日に、全部経験済みなのに、今が、全部が初めてみたいだった。手を恋人のように繋いで、抱き合いながら、キスをしてそれから。
「ね、セックスする?」
「したい」
言ってから、羞恥で顔が真っ赤になった。したいってなんだよって思った。まるで、子供が、トランプする? って訊かれて、したいって言うみたいなノリだった。そんな静樹に旭は笑いながら、しようしようって楽しそうに手を引いて居間に上げてくれた。
店の表の鍵閉めないとって言ったら、また笑われた。静樹くん、どんだけ、ヤる気なんだよって。別に誰にも邪魔されたくないとか、そんなつもりはなくて、けど、身体も心も切羽詰まっていて、邪魔されたくないのは本心だと思った。
多分静樹のなかでは、男の人を好きになって自分の思いを告白するってハードルが一番高くて。それを超えてしまうと、その先には怖いことなんてなくて、身体の繋がりには抵抗はなかった。
「田舎のいいとこは、隣近所誰もいねぇとこだな。苦情の心配はないし、静樹くん好きなだけ声出していいよ」
「そんな、大声だしたり、しない」
「静樹くんのスケベ声、けっこう大きいからなぁ」
「なッ」
「嘘だよ」
手を引かれて旭の二階の部屋に入るなり、旭は、店のエプロンとシャツを畳の上に脱ぎ捨てると、静樹をベッドの上に押し倒した。
「あの、俺、最初の時、変、でしたか?」
「んー可愛かったよ? めっちゃエロかったし」
静樹にとって男同士のセックスは、絵空事だった。答え合わせしたのが旭しかいない。だから、正しいセックスも普通のセックスも、きっと旭がそうだって言ったら、その通り覚えると思う。
黙っていると頭を両手でぐしゃぐしゃとかき混ぜられた。
「別に、変じゃないって。褒めてるの。そんな心細そうにすんなよ。あの日のこと思い出したいなら、もう一回酒飲んでやったら思い出せるかなぁ」
「それは、いやです」
酒を飲むことは、明確に拒絶していた。
「なんで?」
「忘れたくない、ですから。今度は、全部覚えてたいから」
「じゃあ、今日は、静樹くんが絶対忘れられないような夜にしようぜ」
「その言い方、なんか馬鹿にしてますよね」
「してないしてない、ほらほら早くえっちしよ」
そういってくすくす笑いながら、啄ばむように頬に口付けられる。シャツの中に手を入れられて、少し汗をかいた肌を大きな手で弄られた。旭に胸元を触られながら、キスされていると鼻にかかったような甘い声をこぼしてしまう。
「胸、いじられるの好き?」
「……ぁ、ん、好きかは、分からない、けど、なんか、変」
「おー、いいじゃん。もっと変になってよ」
そう言って黒のTシャツを脱がされて、ベッドの下に投げられる。そして、旭はニヤリと笑うと静樹の左胸を見せつけるように舌先で舐めた。
「ッ、ぁ、それ」
「いいんだろ? 吸う? それとも噛む?」
ちゅっちゅっとやらしい音を立てて、左胸を吸われながら、右胸の乳暈を焦らすように指先で擽られる。右の先っぽの固くなった部分を優しく撫でるように舌で舐められていると、腰が重くなるような感覚がした。多分、これが気持ちいいんだと思った。
乳首を優しくされるだけじゃ物足りなくなったところで油断した右胸を強く指でこねられた。勝手に性感帯になったように胸の粒は充血して、旭にもつと触れられたいみたいに、ぷくりと腫れてしまう。
「ぁ、ああ、んんっ、やっ、それ、やです」
「いや? でも、すげぇ、いいみたいだけどなぁ」
旭に、そう言って煽られると、下着の中に手を差し込まれた。手のひらで静樹の中心を擦られると簡単に期待して膨らんでしまう。すでに蜜をこぼしていた先っぽの滑りを擦り付けるよう扱かれるとたまらなかった。ほとんど忘れているのに、あの日、居間で押し倒されて性器を育てられて、気持ちよくされたことは身体がちゃんと覚えていて素直に反応を返してしまう。
「きもちい? まぁ、訊かなくても分かるけどね」
とめどなく続く快楽の波にすがる何かが欲しく、シーツを握りしめていたら、熱棒を擦られながら、旭に手を取られ握られた。
「ぁ、ああっ、んんっ、旭さん」
「すげーびくびくしてる。いきそう?」
こくこく頷いたら、そのまま先っぽの弱いところを親指で擦られた。
「あ……」
カウパーでビショビショになっていた性器から、白濁が溢れ旭の手と自身の下腹部を汚した。下着と脱げかかっていた下の衣服を全て脱がされて、Tシャツと同じようにベッドの下に投げられた。同じように、旭が下の衣服を脱ぐのをまじまじとベッドの上から見ていたら、また何か思い出したように笑われた。
「めっちゃ見てくるし」
「だって」
「静樹くん、俺の裸見たいって、酔って泣きながら抱きついてきたの覚えてる?」
「え」
「好き、大好きって言いながら、俺のここにいっぱい、キスしてくれたし」
トントンと指で胸を指さされる。確かに、自分以外の男の人の身体に興味はあったし、見たいと思っていたことも事実だった。
でも誰でもいいわけじゃなくて、旭だったからだと思う。好きな人の身体だから、見たいと思った。
「今も、触りたい? 触る?」
こうやって、いま抱きしめられて、セックスして幸せだった。
好きな人じゃないと無理だって言われて、最初は自分の本当の望みが分からなくて混乱していたけど、今なら分かる。静樹だって、旭が好きだったから、裸が見たいし、触れたかったのだと思う。
「触っても、いいですか」
「もちろん、さわって、気持ちいいから」
静樹は、身体を起こして、旭の胸にそっと触れる。同じようにドキドキしている旭の身体が愛しかった。
自分と同じように興奮して熱を持っている下腹部に安心している。あの晩、下心もあったかもしれないけれど、知りたくて、確かめて、ただ、安心したかったのかもしれない。
男性を好きでいてもいいって思いたかったのかもしれない。いいよって言われて、静樹は旭の熱に触れる。あったかくて、自分が旭にしてもらったのと同じように、手を動かしてみると旭の額が、静樹の肩に触れ、熱い吐息が皮膚に当たった。
その旭の興奮を伝える呼吸に、自分の熱も一段階上げられている。
「あの、俺、下手くそ、ですよね」
「んー、超気持ちいい。ね、触るだけでいいの?」
「ぁ、うん……」
「そっか、そっか。実はね、あの日、ちんちん舐めたいって言われてさぁ、俺、静樹くんに押し倒されたんだよねぇ。流石に酔ってるからやめとけって言ったんだけど」
穴があったら入りたかった。酒に酔ってるからってどこまでぶっちゃけているんだと思う。
「ぁ……え、と。旭さんが、した方が、いいなら」
静樹が旭のそれをしごいて大きくしていると、はぁ、と熱っぽい吐息が溢れる。
「ま、今日はダメかな。だって、今日こそ静樹くんの中入れたいもん」
旭のその言葉に驚いていると、再びベッドの上に押し倒された。
「静樹くんの、後ろにこれ、初めて入れてもいい?」
そう言って、ひたりと静樹の後孔に旭の熱杭の先が当たった。
「え、初めてって、だって、もうしたって」
「してないよ、最後までは。だって、静樹くん寝ちゃったって言ったじゃん、一番いいところで」
覆いかぶさってきた旭は、静樹の唇にキスすると、カウパーで濡れた指を後ろに一本差し込む。
確かに、あの日の朝目が覚めた時、そこには、何かが入っていた感覚が残っていた。
「痛がるかなぁって思って、いっぱい慣らしたんだよなぁ、ここ。三本入れた」
言いながら、こつこつと指で静樹の興奮の証のちょうど後ろ側を優しく人差し指で叩かれる。
「ぁ、あ、んっっんん、あさひ、さ、それ!」
「お、ちゃんといいところ覚えてたな、よかったよかった」
舌を絡めながらキスをして、後孔を弄られながら、自分の発情を全部余すところなく旭の前に晒される。
静樹が、昔アサ兄を好きだったのは、事実だけど、いま好きなのは、目の前の旭なんだと思う。静樹は、ずっと思い出の中でしか、自分の本当がなくて、そこでしか、本音をさらけ出せなかった。
それでも、間違いなく、恋のきっかけや、誰かを愛するタネを植えてくれたのは、アサ兄だ。
「寝落ちするときさ、静樹くんに、すごいえっちなこと、いっぱいして、って言われたんだよね」
「ッ、ぁ……」
「これ、奥に突っ込んで、すごいえっちなことの、続き、しよっか」
静樹が頷くと、旭は人差し指と中指で静樹の潤んだ孔を広げる。広がった内側へゆっくりと熱杭を沈めてくる。いっぱいいっぱいになったそこは、旭の熱棒をもっともっとと欲しがっているみたいに、ぎゅうぎゅうと引き絞って暴れた。
「あ、あ! んんん」
「こら焦りすぎ、ちゃんと奥まで気持ちよくさせてやるから」
「だ、だって、ぁ」
「ほら、一回、力抜けって、でないと俺が先に出しちゃうだろ」
一度抱きしめられて、静樹が力を抜き落ち着けるまで旭は待ってくれた。
舌を絡めてキスをして、息を吐いたところで、一度奥まで沈めた熱杭をぎりぎりまで外に出し、静樹が気持ちよくなる、浅い部分を硬い先で捏ねるように虐められる。
「あぁ、あぁ……んんんっ」
「気持ちいいだろ?」
目の裏がチカチカするような、直接的な刺激に涙が溢れる。その涙を旭は舌で舐めた。
「んぁ、あ、旭さん、気持ちいい」
「俺も気持ちいいなぁ、静樹くんのなか。やっと入れた」
クーラーは、二階に来た時につけたばかりで、まだ部屋の中は、ぬるい空気が満ちていた。静樹から離れ、上体を一度起こした旭の額から、ポタリと汗が落ちる。薄く開いた唇は、自身と旭の唾液で妖しくぬらりと光っていた。さっきまで口交していたのに、離れると、もう口が寂しくなって、コクリと喉が鳴った。
「ねぇ、静樹くん、今日、なか、出してもいい? 最後、俺が奥まで綺麗にするから」
「ぁ、うん」
「うんって、ちょっとは迷えよ。あー、なんていうか、今更だけど、誓って、変な病気とかはないし。あと、後ろは痛かったり、つらかったら途中でも、遠慮なく断れよ?」
もう一度、覆いかぶさってきた旭は、静樹の額に一度キスをしてそう訊いた。
「ぁ……え、いつも出してくれないものなの?」
静樹が、純粋に興味で旭に中でいって欲しいと伝えると困った顔をされた。
「おい。何を見てそう思ったお前」
「えっと……」
「あのなぁ、この妄想ドスケベめ。ちゃんと、あとで教えるけど、本当、マジで、お前が思いつめて都会で変な店行かなくて、よかった」
「変な店って、どんな」
「たまたま入ったのが、お前のことが好きな俺がいる、普通にエッチな店でよかったなって話」
そう言って、静樹の呼吸を奪うようにキスをしながら最奥を何度も熱杭で激しく叩かれた。
「んんっ! ぁあ、ああああ、ッんんっ」
「ッ、っ!」
一番奥に旭の熱が吐き出され擦り付けるように、体を揺さぶられると、旭の熱さを感じて生理的な涙が溢れて困った。
キスをして、お互いの肌に触れ旭の熱と快感の余韻を味わっているのに急に静樹の中に寂しさとも不安ともわからない何かが落ちてきて、子供のように旭に縋っていた。次第にそれは、ぐずぐすと泣き声に変わる。こんなに嬉しいのに、今度は、この幸せが怖くなる。また、初めての感情を旭に教えられた。
「ん、どうした?」
「なんか寂しくて」
「大丈夫だって、泣くなよ。これで終わりじゃないし、俺と付き合ってくれるんだろ?」
頷くと、優しいキスをされて安心して、嬉しくて、やっぱり泣いてしまった。
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