友達のおじさんが心配だ

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友達のおじさんが心配だ

「へえ。それって、やめろとか止めないの?」 「言ってもむりむり! 本人は悪い子じゃない、自分が勝手にやっているだけだって聞く耳持たないんだよ」 「えらいハマりようだな……」 「そうなんだよ~。おまえもさ、その会ってるおっさんが会社の金をちょろまかして得たものだったらどうする? 前にそういうニュースがあっただろ?」  たしかに最近世間を驚かせた「元経理担当横領事件」があった。田舎の公務員がブラジル人に十五億貢いで発覚したものだ。日本中が吃驚し、連日のように昼のワイドショーを騒がせていた。 「さすがにそれはないだろ。夏目さん、仕事頑張ってそうに見えるけど……」 「ま、どうだかわかんねぇよ。それに、こういうのは続けていけないしな。噓ばっかりついても、いずれにしてもバレる。誠実に生きるのが一番だ。じゃないと結婚なんてムリだ」  努はやけに力のこもった声をだした。運命の番いと出会ってから、やや自信過剰気味になっている。 「結婚ね」  まあそうだけど……。  しかしながら、言っていることは正論だ。ま、こちらとしてはエッチして結婚したいわけで。  結婚したら、すぐに番いになって、区役所で番い登録して、マイカードに夏目理久なんてあって、結婚して子どもなんて産んじゃって……、老後は鎌倉とかさ。そんなの最高すぎるけど所詮現実を見ないといけない。  地下鉄の入口手前まで歩くと、びゅっと冷たい風が頬をかすめた。右手から電車が地響きを立ててやってくる。 「あ、もう時間か。りく、また図書館行こうな!」 「お、おう……」  爽やかに手を振って、努は改札口にむかう。 友達思いのいいやつだ。アルファだし、そばにいてもモテるのがわかる。  こういう男に惚れるのもありだが、まったく好みじゃない上にノンケでお互い眼中にないのが幸運だったと今にしてはそう思う。  家には呼べなかったが、幼いころから一緒に遊び、あけすけな相談もし合った。そのせいか胸キュンすらない。  だからか、運命の番いに出会いましたと言われておめでとうとすぐに口に出せた。  まったくもって自分の拗れた性癖に感謝したい。 「まあ、うまくやれよ」
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