おれの好きなタイプと趣味

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おれの好きなタイプと趣味

 そんな理不尽な格差のせいで、俺はわびしい気持ちを癒せる話し相手を求めた。  父親が好きだったハードボイルド小説が詰め込まれた本棚に手を伸ばし、上の段から下の段まで読んだ。そのおかげなのか、己の信念を曲げずに闘う男と強くて渋い男たちのとりこになってしまった。  クールで非情、強固な信念をもったタフガイ。大好きだ。この言葉で、白米三杯はいける。  幼いころからそんな本ばかり読み耽り、姉には女という現実を見せつけられたせいで、俺はちょっと拗らせたおじ専になってしまった。いや、ちょっとじゃない。重症のおじ専だ。それもかなり深刻だ。 「……お茶だけか?」 「そう。お茶だけよ。あんたおっさん好きでしょ。なんだっけ、初恋も友達の父親だったとか……」 「う、うるせぇ!」  それは言うんじゃない。  二十歳以上の落ち着いたアラフィフ男性が好きという性癖で、初恋は友達の父親だった。実の父親じゃなくてよかったと、今ではほっとしている有り様だ。  しかもだ。最近ではアラ還でもよいとすら思っている。理想のおじさまによしよしされながら、抱かれたいという願望は募り続けて止まない。 「なによ?」  野太い地の声に、すぐに現実に引き戻された。  外ではふんわりゆるキャラ癒し系女子特集でセンターを装っているが、家ではオラオラ系野生ゴリラ。またなんかいいやがる。 「……でも、さ。……それ、エ、エンコーみたいなやつだろ?」
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