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◇
数日後、葵の自宅謹慎が解除された。葵はまず最初に一人だけ荷物が残った資料室へ行き、お世話になった部屋を綺麗にしてから深々とお辞儀をした。
「お世話になりました」
それから大きな段ボールを持ちながら新しい部署へと向かう。初めて行く場所で迷子になりながらも何とかそこに到着することができた。怖い顔をしたスーツ姿の警官たちが何人もパソコンを睨んで作業をしている。捜査をしに外へと走り出す警官もいた。
「失礼します!!」
葵は全員に聞こえるような大きな声で言った。しかし誰も葵になんて目を向けてくれない。一人を除いては。
「本日より、公安第二課でお世話になります。朝田葵、巡査部長です! 宜しくお願い致します!」
ノーリアクションは予想通りだ。葵は緊張感のある部署に足を踏み入れ、空いた机に自分の荷物を置いた。
「よっ、巡査部長」
隣で夜野が葵の昇格を祝った。葵は巡査から巡査部長に昇格し、公安第二課への配属が決まった。
「どうも、夜野警部補」
昇格したのは夜野もだった。葵たちは烏蝶での功績が認められ、昇格することができたのだ。
葵は段ボールから荷物を取り出すと、机の上に並べていく。今まで大事に扱ってきたヘヴンタワー事件についてまとめた資料ファイルは、引き出しの一番奥にしまった。もう、葵には必要がないものだ。
「末永く宜しくです、夜野さん」
「またお前とバディとはな。やってられん」
「そんなこと言って、嬉しいくせに~」
葵はニヤニヤしながら、夜野の肩をツンツンと叩いた。「やめろ」と鬱陶しそうに夜野が体を避ける。
幾多の試練を乗り越え、互いに信頼を深めた二人のバディ関係は揺るぎないものとなった。
葵は過去の悲しみを乗り越え、真の正義を追求する警察官として成長を遂げた。夜野もまた、葵の情熱に触発され、新たな目標と希望を見出していた。彼らのコンビネーションは抜群であり、その絆はますます強固なものになっていく。
未来には数々の困難が待ち受けているだろう。しかし、葵と夜野は共に手を取り合い、どんな危機にも立ち向かう覚悟を持っていた。彼らの心には、平和と安全を守るという共通の使命が宿っている。
二人の瞳には、新たな挑戦への決意と希望が宿っていた。葵と夜野の物語は、ここから新たな幕を開ける。
(了)
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