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葵は口を尖らせた。こっちだって別に参加したくてこの任務に参加してる訳じゃないし。米村が勝手にやったことだし。
「あれは、二課のエースの夜野匠海だね」
ぽつりと亀梨が言った。「夜野?」と葵が聞き返す。
「交番勤務を異例のスピードで終えて公安に引き抜かれた天才だよ。公安に所属してるなら誰もが彼のことを知ってる。葵ちゃんたちは公安出身じゃないから知らないかもだけど」
公安部資料課とは謳っているものの、公安部に所属していた者は亀梨しか存在しない。亀梨は元外事課で、それ以外は別の部署から異動してきていた。葵は組織犯罪対策課(通称・マル暴)出身で、八村はサイバー犯罪対策課、鶴賀は捜査第一課出身だ。それぞれに目をつけ、米村が直々に資料課への配属をオファーしたのだ。
そして結成されたのがこの《何でも屋》。真の実態は、公安部特命捜査班である。結成された理由はよく分かっていないが、米村曰く未来の特命捜査班設立のための実験的なものらしい。
「エリートとかどうでもいいっす。人に向かって舌打ちするなんて最低。小学校からやり直すべきですよ」
「まぁ、こんな緊迫した状況で俺らは普通に飯食ってるからな。舌打ちしたくなるのも分かる」
葵は自分が持っている弁当を見た。他が軽食の中、彼女だけはザ・男飯といった焼肉弁当である。葵は無言で鶴賀を見ると、「こっち見んな」と彼が言った。
「でも腹が減ったら戦はできぬって言いますしー。何? 焼肉弁当食べちゃダメなんですかー?」
ほぼ逆ギレで葵は鶴賀に詰め寄る。「俺に絡むな!」と鶴賀は面倒くさそうに亀梨を盾にした。亀梨が苦笑いを浮かべて場を宥めようとする。葵は残りの弁当を頬張ると、頬をリスのように膨らませて弁当箱の空をゴミ箱に捨てた。
「八村、全車両の防犯カメラの映像出せるか」
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