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 男がオロオロしている間に、葵はさらに吐きそうな声を出す。周りの乗客も異変に気付いたのか、心配そうに見守る。男は葵を支えながらデッキの外に連れて行った。扉が閉まった瞬間、葵は男のみぞおちに肘打ちを食らわせた。 「ぐっ……!」  男はよろめく。葵はさらに畳み掛け、男が地面に這いつくばった瞬間、手錠を取り出し片手をデッキの手すりに固定した。男は手すりを外そうと抵抗するが、頑丈なためにびくともしない。 「お前、サツか!」 「うん、見えないでしょっ?」  葵は顔の近くでダブルピースを作って男を煽る。男は空いた片手でカッターナイフを取り出したが、葵はすぐにそれを取り上げた。 「馬鹿だね、あんた」 「うるせぇ!」 「さて、首相の情報はどこで手に入れたの? SP? 警察? 裏切り者を教えてくれる?」 「知るか!」  葵は男のみぞおちに蹴りを入れた。 「を教えてくれるかな? いるんでしょ、一人裏切り者がこっち側に」  男の眉毛が動いた。「教えるかよ!」  扉が開き、夜野が現れた。 「あ、二課のエースの夜野匠海さんだー。どーも、《何でも屋》でーす。お先に犯人逮捕しちゃってすみませんねー」  夜野がムッとした表情で近づき、捕まった男を睨む。 「これお前がやったのか?」 「勿論。私こう見えて優秀なんですよ、資料課なんかにいるけど。いや、優秀だから資料課に配属されたのかな」  さっぱり分からないというように夜野が眉間に皺を寄せた。 「にしても、エースよりも先に問題児と言われているうちらが捕まえちゃうなんてー。エースって意外に、無能なんですね~」 「俺だって目星はつけていた。勝手に無能扱いするな」  夜野がギロッと睨んできた。葵はさらに煽る。 「夜野さん、この男の手を掴んどいてくれません?」
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