69人が本棚に入れています
本棚に追加
葵は夜野の動きに感心した。
《何でも屋》が3号車に到着した。乗客を誘導する。新幹線が緊急停車するため、バランスが保ちづらい。そんなのに屈せず、夜野とSPは拳をぶつけ合う。
葵は首相に近づいた。逃がさない、という目つきで睨むように見る。
「首相の避難は私たちが請け負います」
「いや、ですが」
「あんたもユダだってことはわかってんだよ」
SPの表情が強張った。男は首相の肩を掴み、カッターナイフを取り出して首に突きつける。
「なっ! 何するんだ!!」
首相が声を上げた。葵は「あらら」とあまり困っていないような声を上げた。
「近づいたら殺す!」
葵は男に近づいた。男はビックリしたように「容赦なく殺すぞ!」と葵に向かって刃を向けて威嚇する。しかし長い足で男の手にクリティカルヒットを食らわせ、ナイフが飛んだ。その瞬間、葵は首相から男を引きはがす。他のSPが男に襲いかかり、首相は無事避難させられる。
ユダの制圧は3分もかからなかった。手錠をかけられた瞬間、男たちは動かなくなった。
犯人たちは逮捕され、首相のイベントは中止。後々、彼らが同じ革マル派に所属していたことが明かされ、政府は猛批判された。ユダ達をSPとして気づかずに近くに置いていたことに対する判断不足に、ネットでは首相の辞任を求めている。
元々お飾り首相として有名であったため、前々から首相の辞任は野党からも求められていた。しかし今回に関してはこじつけすぎではないかと葵は思った。近くにいる人を疑うことは意外に難しいものだ。
最初のコメントを投稿しよう!