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「死刑が執行されるまでの期間は法律上判決が出てから6ヶ月以内とされているが、実際は6ヶ月以内に執行されることはない。それは朝田さんもご存知ですよね?」 「ええ、再審請求やらで色々な手続きがあるからです」 「そう。まず、俺は沢山の罪を犯してるので全ての内容を起訴して判決を下すまでに時間がかかる。それに死刑判決が出ても、俺は再審請求なり何なりする予定です。そうやって死刑執行期間を引き延ばして──」  鬼塚の口が葵の耳元に移動した。葵は警戒しながら鬼塚を睨んだ。 「俺はする」  ニタァっと鬼塚は笑った。葵は「させるか」と吐き捨てる。鬼塚がけらけら笑いながら着席した。 「俺はまだこんな場所で死ぬような男じゃないんでね」 「日本では滅多に脱獄が起きません」 「知ってるよ。でも滅多にってだけで、脱獄が絶対に起こらない訳じゃないだろ? なら俺はその可能性に賭ける。職業柄、賭け事は得意でね」 「させない、そんなの」 「どうかな」  鬼塚が嘲笑った。葵は今すぐにでも鬼塚をこの拳で殴りたかった。こんな危険思想を持った男を脱獄なんて絶対にさせない。日本の警察官の威信にかけて、絶対にだ。こいつには大人しく死刑になって、死んでもらう。 「俺の事、殺しておけば良かったって思っただろ? その方が良かったかもなー。正義? そんなの捨てちまえよ。間違った正義だってあるんだぞ」 「私は警察官です。一度はそんな考えを抱きましたが、もう抱きません」 「人間は醜いからなぁ。どうせまた同じ考えを持つ」  大人しくする葵に鬼塚がニタァっと笑って、気味の悪い笑い声をあげた。葵は鬼塚を黙らせるために、バンッと机を思いっきり叩いた。鬼塚は「怖いよ、朝田さん」となめた口調で言う。 「本当は今すぐにでもあんたを殺したい」 「お?」
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