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「あんたを捕まえるまで、何度脳内で殺したことか。ナイフで何度も何度もあんたの心臓も脳みそもぶっ刺した。でも殺しても私の両親は帰ってこないし、この怒りが消えることはない。むしろあんたを殺したことで罪に問われて刑務所にぶち込まれることの方が最悪な人生よ。あんたのせいで私の人生もう左右されてたまるか」  葵はギロッと鬼塚を睨んだ。鬼塚がハハッと乾いた笑い声をあげる。その目は笑っていない。 「言うね、お嬢ちゃん」 「朝田です。その呼び方キモイからやめろ」 「脱獄したら一番最初にお前を殺す」  鬼塚の額には血管が浮き出ていた。首や手の甲にも浮き出ており、先程までリラックスしていた体が消え去ったみたいだ。 「脱獄なんてさせねぇよ」 「してみせる」 「私を殺せなかったあんたには絶対にできない」 「殺せなかった?」  そこまで言って、「ああ」と鬼塚は腑に落ちたような顔をした。 「だからか。あんたのこと、どっかで見たことがあったような気がしたんだ。思い出した。ヘヴンタワーで泣き叫んでたクソガキだ。SATさえ来なければ殺せたのに。俺が唯一逃した獲物だ」  鬼塚は葵の顔をなめるように見ると「お前か」と言った。 「なら尚更殺す」 「私は生き続ける」  バチバチと葵と鬼塚の間に火花が散った。 「お前の人生は、ここで終わりだ。今まで私が苦しんだ分、精々苦しめ」  葵はフッと見下すように笑った。鬼塚がチッと舌打ちをした。葵は立ち上がると、鬼塚を見下ろす。そのままドアの方へと向かった。鬼塚がガンッと机を思いっきり蹴った。それから手についた手錠を外そうと壁を殴る。書記官が慌てて抑えようとし、鏡越しに中の様子を窺っていた他の警官たちも参戦した。 「朝田葵!! お前のことは覚えたからな!! このクソガキがッ!! 泣いて待ってろ。今すぐにでも殺してやっから!!」
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