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◇  数日後、資料室でダラダラしていた葵たちの元に、満面の笑みの米村が拍手をしながらやってきた。 「いやー、皆さん本当にお疲れ様です。さすが僕が集めた精鋭たちですね」 「ほとんど朝田の手柄ですけど」  鶴賀が苦笑いしながら答えた。 「庁内では夜野匠海の手柄になってますけどねー」  葵は唇を尖らせた。その事件はすべて夜野が解決したことになり、《何でも屋》の活躍はまるで存在しなかった。その言葉を聞いて、米村がハハッと笑った。 「にしても、朝田くん。よくユダが一人じゃないって分かりましたね」 「だって裏切り者が一人いるって言ったら、何か変な表情を浮かべたんで。だから一人じゃないんだなーって。それにあのSPだけ妙に首相にくっついてたんで、おかしいなって思ったんですよ」 「さすが天才・朝田葵ですね」  米村が称賛した。  葵は褒められて「何もあげませんよ〜」と調子が良さそうに言った。彼女は警察組織内でちょっとした有名人になっていた。マル暴に配属されて二年も経たずに、次々と暴力団組織を逮捕した若き天才巡査・朝田葵。  ガチャッと扉が開き、葵たちは入口の方を見た。スーツ姿の男が段ボールを抱え、澄ました表情で立っていた。葵たちは目を丸くした。それは夜野だった。 「えっ、夜野匠海!!」  葵は口をぽかんと開け、「何で?」と疑問を口にした。
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