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 二人が去った後、ガチャガチャコーナーの前には未開封のカプセルが幾つも床に転がっていた。葵と八村は時間が許す限りガチャガチャを回し続ける。  葵は慣れた手つきでガチャガチャを回し、お目当ての色のカプセルが出てきて「ハァ!!」と感極まった声をあげた。すぐにカプセルを開けると、そこにはカペラのキーホルダーが入っていた。東京駅限定ということで駅員の衣装に身を包んでいる。 「か、可愛い……!!」 「出た!!」  続けて八村もお目当てのベガのキーホルダーを引き当て、目を爛々とさせる。葵はハッとなって腕時計を見た。 「ヤバッ!」  すぐにカペラ以外のカプセルを八村の鞄の中に仕舞うと、新幹線のホームまで全速力で走った。普段から超絶インドアの八村は息を切らしながら何とか葵の後を追う。改札を抜け、ホームまでやって来ると既に停まっていた新幹線に飛び乗った。八村も扉が閉まる寸前で乗り込むことに成功する。そのまま八村は地面に手をついて、肩で息をした。 「警察官が飛び込み乗車していいんですかぁ、せーんぱーい」  ニヤニヤしながら葵は言うが、八村は体力を消耗しておりとても返事ができる様子ではなかった。葵は鼻で笑うと、八村を放置して新幹線の中を自由に歩き始めた。  3号車の中に入ると、雰囲気ががらりと変わったことに気が付いた。何だかピリついている。首相がいるのだ。沢山のSPだけでなく、私服を着ている二課の刑事も乗客に交ざっている。  首相がどこに乗っているかどうかは安全の為にも公表はされていない。そもそも首相がいつどの新幹線に乗るのかも公表されていない。それなのにその機密情報がテロリストに伝わるなんて、一体どこから情報が漏洩したのだろう。がいるのだろうか。
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