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コンビニの自動ドアを抜けると涼しい風が俺らを襲う。エアコンの効いたコンビニは快適だ。
「勇介、イートイン空いてる!」
嬉しそうな勇也。こんな場所でも勇也は注目を集める。隣にいる俺はリア充に見えるのだろうな。恋人ではないが。
「まずはドリンクを買おう。何飲む?」
「おごってくれるの僕、コーラ!」
「はいはい」
冷えたコーラを二本手に取りレジに向かうとイートインにいたと思った勇也が先にいた。
「なんか買ったのか?」
「うん。フィナンシェを二つ。これでおあいこだよ」
レジ店員からの視線が痛い。もしかしたらリア充滅べと内心思っているのだろうが、本当恋人じゃないんだよ。
俺もコーラを買ってイートインに向かう。
勇也はコーラを受け取り、キャップを開けて口をつける。
喉元が一瞬膨らむ。
「はぁ夏はやっぱり炭酸だよね!」
嬉しそうな声をあげる勇也だが、俺は一瞬勇也に見とれていた。喉仏も出ていない勇也の喉にピンクの唇。コーラ一口飲んだ姿を見ただけなのに、どうしようもなく胸の高鳴りを感じた。
「そうそう! 勇介、ちゃんと課題やった? サボってないよね?」
「ちゃんとやったよ。やらなきゃ勇也が怒るだろう」
「よろしい。コーラを飲み給え」
「全く」
俺もキャップを開けて、口をつける。コクンと音を立てると炭酸の痛みが喉を抜ける。一口コーラを飲む俺を勇也は微笑みながら見ている。
「何?」
「んーー。勇介もさっき僕を見ていたでしょ? お返し!」
「俺を見たって面白くないだろ?」
「僕を見るのは面白かったの?」
「いや。面白くは……」
「じゃあなんで見てたの?」
今日の勇也は、なかなか強引だ。こういうときはいつもの言葉を口にするに限る。
「可愛いからだよ」
「それだけ?」
「それだけだよ」
「ふうん」
勇也はまた一口コーラに口をつける。珍しく真面目な顔をしていた。
「勇介、フィナンシェも食べなよ」
勇也の考えていることが分からない。何と言ったら正解だったのだろう。何かを期待されたのは確かだろうが。
「そうする」
フィナンシェは甘い。噛んでコーラで流し込む。
勇也はフィナンシェを食べながら目の前のガラスの向こうを見ている。
「なかなか難しいね。色んなことが」
「なんの話だ」
「勇介はそう思うことはない?」
「あるよ」
いつまで経っても勇也に好きと言えない。今はそればかりだ。ちゃんと言える日が来るかどうかも分からない。そういう勇気はどうすれば出るのだろうな。
「本当、難しいことばかりだ」
「だよね」
そうして時間が過ぎていく。
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