5人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめん。夢人くんとは付き合えない。君は誠実だし勇気もある。実際いい奴だと思うよ。僕と勇介の関係も笑ったりしないし、その上で必要なことだけ伝えたくれた。だから僕も誠実に答えるよ。夢人くんとは付き合えない。今の僕には大切にしたい時間があるんだ。それを疎かにして僕は誰かと付き合うなんて無理だ。……でもさ君とは仲良くなれると思うんだ。友達じゃ……駄目かな?」
夢人はうんうんと頷いて微笑んで見せる。
「だと思ったよ。うん。友達になってくれるかな? 勇介くんも」
「なんで俺が……」
「はい勇介、スタンドアップ! そして握手!」
勇也に促されるままに俺は立ち上がり、夢人と握手をする。
「勇介くんはズルいよね。もう独り占めさせないから」
夢人の言葉に俺の目は泳ぐ。
「そんなつもりは……」
「じゃみんなで一緒に帰ろうか」
勇也は勇也で平気な顔で笑う。
「勇也くんの大切な時間だもんね」
「ふふふ」
夢人と勇也が笑う。
「大切な時間って何だ?」
「鈍い勇介は知らなくていいんだよ」
先を歩く勇也と夢人。俺も鞄を手にあとをついていく。
何かよく分からないが、とりあえずは安心していいようだ。いつかは必ず気持ちを伝えなければ誰かに奪われるかも知れない。そんな恐怖に襲われた一日だった。
最初のコメントを投稿しよう!