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カラオケ屋の受付が女性で良かったとルームに入ってからホッと胸を撫でおろす。勇也は当たり前のように俺の隣に座りテーブルの向こう側に夢人が座る。
「ちょっと待て! 見えてないか!?」
俺のいきなりの発言に勇也は目を丸くするし、夢人はくすくす笑う。
「残念ながらテーブルに阻まれて見えません」
夢人の言葉にまた俺は胸を撫でおろす。
「なんの話してるの?」
とうの勇也はこれだから俺も心配になる。
「勇也、ドリンクは俺がとってくるからあんまり立つなよ」
勇也がぽんと拳を叩く。
「そうかぁ。勇介は僕を心配してくれているんだね! へへへ嬉しいなぁ。サービスしよっか?」
勇也がほんの少しだけスカートをたくしあげて白い太ももを見せてくる。
「やめなさい」
「はーい」
楽しそうに笑う勇也。
「じゃあ夢人から歌いなよ。僕は焦る勇介をちょっと観察してるから。こうやって」
勇也は俺の顔に顔を近づける。鎖骨のあたりについ目が行く。見えそうで見えない胸も俺の鼓動を早くする。
「勇也くん、早速楽しんでるね。俺も歌いつつ勇介くんを見学するよ」
ちくしょう。心配してるのバレたらからかってくるし。夢人は夢人でこちらをちらちら見つつ美声を響かせる。大人しめの性格だけあって声は小さいが抑揚はちゃんとあるし、なかなかの盛り上げ上手だ。
「あーー。終わっちゃった。次、僕歌うね」
勇也が俺から離れて曲選びを始める。夢人はマイクをとんとテーブルに置いて俺を笑いながら見つめてくる。
「幸せな時間だったかい?」
「うっせぇよ」
幸せな時間に決まっているだろうが。俺は勇也が大好きなんだから。
勇也が歌い始める。昔から歌い継がれる女性ボーカルのラブソング。勇也って声も可愛いんだよな。男の子の声ではあるけど、言われなければ見た目と相まって女の子だと思ってしまう。歌う勇也の姿に見とれて声に聞き惚れる。勇也とカラオケに来るといつもこの状態だ。
夢人のほうをうかがうと夢人もどうやら聞き惚れている。そうだよな。この声だとそうなる。
勇也が歌い終わると夢人はパチパチと手を叩く。
「すっごい良かった! 勇也くん、歌声も可愛いんだ!」
「えへへへ。勇介はどう?」
「勇也の声が可愛いのは分かってるし……」
「今は?」
「可愛かったよ」
「えへへへ」
嬉しそうに勇也はデンモクを俺の前に置く。
「ほら。勇介の番だよ」
デンモクを置かれた瞬間、俺は悩む。勇也と二人きりだと選曲に悩まないのに、夢人が増えただけで悩んでしまう。ラブソングで行くか? 歌の大半はラブソングだし。いやネタ曲とかも?
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