目覚める

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 俺は近くのコンビニでトイレを借りる。コンビニでも店の前に屋台を出してホットスナックを売っている。夏だとよく見る光景だ。用を足して勇也の待つベンチに向かうと数名の男が勇也に声をかけていた。 「お嬢ちゃん、俺らと遊ばない?」 「僕はお嬢ちゃんじゃない! それに人を待ってるんだ!」 「おうおう。気が強いね。しかも僕っ子かぁ。たまらないね」  一人が勇也の手首を掴む。 「離して!」 「悪いようにはしないからさ!」 「離せ!」  暴れた勇也の手が男の一人の頬に触れた。 「大人しくしろよ!」  男は勇也の首に手を伸ばした。 「やめろ!」  俺は駆ける。駆けて何も考えずに勇也の首に手を伸ばした男の顔に拳を叩き込んだ。 「てめぇ!」 「嫌がってるだろ!」  そこからは乱戦。俺は意外と強いということを生まれてはじめて知った。男たちは俺に打ちのめされて立ち去っていく。  はぁはぁと息を荒くしながら勇也を見やる。  不安そうに立ち尽くしていた勇也。良かった。守れた。 「勇介……。勇介ぇぇぇぇ!」  勇也は俺に抱きついて泣き出す。 「怖かったぁぁぁ!」 「勇也、安心しろ。俺が守るって言ったろ?」 「うん……」  その日、俺が一人で大の男性を打ち負かしたことは学校に知れ渡り、俺はニ学期が始まってからクラスメイトに嫌煙されるようになった。もう一つ変わったことは、勇也は学校でも女装をするようになった。 「後悔したくないし、勇介の側にいるときは可愛くいたいんだ」  勇也はそう笑った。本当に勘違いしてしまいそうだが、俺にその言葉の本意を聞き出す勇気はない。大人を打ちのめせても好きな奴の気持ちを聞き出す勇気はない。  高校受験は俺も勇也も合格をして一緒の学校に通えるようになった。  そこでも俺は嫌煙されたが、勇也はその見た目と天真爛漫さと女装のおかげで学園のアイドルと化した。  それでも毎朝、勇也が真っ先に声をかけるのは俺。 「勇介、今日の僕は可愛い?」  俺の答えは決まってる。 「ああ。可愛いよ」
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