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「あ、そうだ! 勇介、週末空いてる?」
「また服を買いに行くのか?」
「うん! やっぱり勇介がいないと」
「たまにはネットで買ったらどうだ?」
「えーー。サイズ失敗したらやだもん……。それにショップで試着したら勇介に一番に見せられるし」
「いいよ。付き合うよ」
「やった!」
満面の笑みを俺の横で見せる勇也。こんな可愛い生き物のお願いなんて断れる訳がないだろう。新しい服を着た勇也を真っ先に見られるのも約得だし。
「勇介が友達で良かったよ」
胸がキュッと締め付けられる。勇也は意識していないだろうが、友達だと言われると魂をわし掴まれる。勇也にとって俺って何なのだろう。本当にただの友達なのか。嫌われていないのは分かるが、それ以上にはなれないのだろうか。
週末。午前十時に勇也の家に迎えに行く。出てくるのは青いワンピースを着た勇也。
「お母さんが若いとき着てたのもらっちゃった!」
そうはにかむ勇也はやはり眩しい。
「似合う?」
「ああ。可愛いよ」
「えへへへ」
勇也は俺の腕にまとわりつく。俺はやっぱりデニムとシャツのお洒落さのかけらもない格好だが、勇也が文句を言ったことはない。俺も少し服装に気を遣ったほうがいいんだろうか。勇也と並んで映えるように。
「今日はどこのショップ行くんだ?」
「古着屋見てみようかなって。流行遅れの可愛い奴揃えたいなって」
「流行遅れでもいいのか?」
「流行り追っている訳じゃないもの。可愛いのは、とにかく沢山欲しい!」
欲求を素直に口にするのは、俺にはできない。勇也は、周りの目も気にせずに自分のやりたいことをやっている。俺よりずっと勇気があるんだろうな。
つい、横の勇也の顔を見つめてしまう。
「何? 何かついてる?」
「いや。勇也はすごい奴だなぁって」
「何言ってるの? すごいのは勇介じゃんか。僕がこうやって可愛い格好を自由にできるのも勇介がいてくれるからだ。僕は勇介に感謝しているんだ」
「俺、何かしたっけ?」
「分からないなら分からないままでいいよ。とにかく勇介はすごいんだ。僕はちゃんと分かってる!」
ぴしゃりと言い切る勇也。悪い気はしないが、俺が何をしたのだろう。勇介の背中を押すようなことは何もしていないはずだが。
「これ可愛い! あれも! どうしよう!」
古着屋ではしゃぐ勇也はまるで子犬のようだ。最新のトレンドではないが、どれもこれも勇也によく似合いそうだ。
「ああ! みんな欲しい!」
みんな買えるほどの軍資金はないだろう。悩む勇介もやはり子犬のようだ。
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