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ちなみに大介の妻で咲良の母、桃子は五年前に病気で他界している。それから大介と咲良は父娘二人で頑張り、一生懸命お店を守って来たのだ。
そして何時ものように常連客で賑やかな店内に、一人の若い青年が入って来た。
レンズが分厚い黒縁メガネに無造作な髪型なので、一見すると顔がよくわからないものの、目から下のパーツはバランスが取れているのが見て取れるので、素顔は結構整っていそうである。
「らーめん山田」は年配者の客が多く、若い客はほとんど来ない。だからこの眼鏡の青年も珍しい客ではあるものの、実は彼もれっきとした常連客だったりする。
「あ、いらっしゃいませ! 今日は何にしますか?」
「……半チャンセットで」
「はーい! 半チャンセット一つー!」
「あいよー」
この眼鏡の青年がふらっと「らーめん山田」に現れるようになったのは一年程前からだ。来店する頻度は月に二、三回程なのでそう多くはないが、店にとっては珍しく若い客なので、大介と咲良はすぐに顔を(と云うか眼鏡を)覚えてしまった。
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