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 複数の路線が集まる主要駅に隣接している商店街の裏道の、飲み屋などが並ぶ雑多な場所にあるラーメン屋「らーめん山田」。  ネーミングセンスが皆無の知る人ぞ知るこの店は、ラーメン屋なのにチャーハンが絶品と評判だったりする。  国民食だったラーメンが多様化し、海外にまで日本のラーメンが広がる中、時代の波に取り残されたような「らーめん山田」が世界的不況の今でも店が潰れずに済んでいるのは、ひとえに昔からの常連客が支え続けてくれているからだ。  そして今日も「らーめん山田」には、飲んだ後の〆にと常連客達がラーメンを求めてやって来る。  「らーめん山田」はカウンターが十五席、テーブルが一つ置いてあるだけなので、常連だけでほぼ席が埋まってしまう。  そんな小さい店なので、店主の山田大介と大介の一人娘である咲良の父娘二人で店を切り盛り出来ている。  娘の咲良は近くの大学に行きながらバイトとして店を手伝っており、明るく人懐っこい性格で常連客にとても可愛がられている。  咲良自身も小さい頃から手伝っていたので接客は十分手慣れているし、お客とも顔見知りなので毎日楽しく働いている。
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