弟の婚約

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弟の婚約

いずれそうなるとは思っていたけれど、こんなに早く可愛い弟の理玖が婚約するとか、ちょっと信じられない。俺がぶつぶつボヤいてると、蓮が俺に腕を回して抱き抱えて来た。 「まぁ、今回はしょうがないよ。理玖くんへの酷い中傷から守るためにも、篤哉と婚約するのが俺も最善だと思うよ。しかし、酷い中傷だよな。あの篤哉しか見えてない理玖くんがシークレットラバーとか、何の冗談かって。 でも実際に大学のやつに絡まれただろ?理玖くんを知らない奴にしてみれば、際どい話には違いないからな。あの時の篤哉はお前もそうだけど、手がつけられないくらい怒ってたからな。」 俺は理玖が出会い系のシークレットラバーのビッチだと思われて、変な学生に絡まれた時の事を思い出して、また怒りが沸々と湧いて来た。 「あのクソ野郎、もっと殴っとくんだった。」 蓮は肩をすくめて言った。 「充分やったと思うけど。でも誰だったんだろうな。シークレットラバーで理玖くんの名前を騙ったの。しかもSMだったろ?まぁ、結果、篤哉は見てられないくらいウキウキだけどね。」 俺はまた顔を顰めて、篤哉のやに下がった締まりのない顔を思い浮かべた。 「まったく。あいつ本当にタイミング外さないよ。自分の欲しいものは確実に手に入れるんだから。迷いがないのかね、あいつには。」 そう言う俺に、蓮は首筋に鼻を擦り付けて言った。 「…俺は篤哉を尊敬するよ。俺は躊躇したばかりに、後手後手だったからな…。」 俺はこれ以上この話を続けると出掛けられなくなりそうだと焦ってきた。 「蓮?今日こそ行かないと、壱太に怒られるから!待てって!うんっ。」 蓮が俺を覗き込んで、ゾクゾクする様な眼差しで囁いた。 「ちょっとだけ。キスだけだから…。」 そう言うと、俺が蓮のおねだりに抵抗できないのを良いことに、あっという間にソファに押し倒されてしまった。蓮の舌使いは俺を直ぐに熱中にさせて、身体を熱くさせる。 蓮が顔を上げてスマホで何やら打ち込むと、うっそり笑って言った。 「壱太には1時間、待ち合わせ遅らせるって送ったから。安心だろう?」 俺は顔が熱くなったけれど、すっかり疼いた身体は蓮を欲しがっていた。思わず微笑むと、蓮はぐっと息を呑んで俺の肩に額を押しつけて言った。 「はぁ、涼介がデレると破壊力半端ないんだよ。…マジ泣かす。」 その日に俺たちが壱太と会った時にはやっぱり遅刻してしまって、壱太がお冠だったのは蓮のせいだからな。
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