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「大魔王様。お帰りなさいませ。お腹の調子は大丈夫でございますか?」
「うむ」
側近の女魔族に迎えられて、私は威厳たっぷりに頷く。大魔王が腹痛とかちょっと情けないが、他に上手い言い訳が思い付かなかったのだから仕方ない。
「勇者一行はすでにこの部屋の目前まで迫っているようです」
側近が生真面目な様子で眼鏡の位置を直しながら言う。私はちらりと横目で側近を見る。一見スレンダーに見えるが、絶対に着やせするタイプだ。脱いだところは見たこと無いが、多分脱いだらすごい。しかも背は高めで、いかにも出来る女といった雰囲気だ。
彼女のような側近がいてくれて大魔王やってて良かったと思う。
「どうされました? 大魔王様」
「あ、いや」
見ていたのは気付かれていなかったらしい。私は一度咳払いして、告げた。
「もう扉の前まで来ているかもしれん。開けて差し上げろ」
「よろしいのですか」
「うむ」
「さすが大魔王様。ただ待つのではなく、こちらから姿をお見せになるとは、わたくし感服致します。扉を開けよ!」
側近が扉の周りにいる魔族に命じる。
扉が重々しく開く。
「あ、え!? 扉が!」
「ちょ、ちょっと待ってください! まだ勇者様がー!」
扉が開いた先には、慌てふためく人間二人の姿がある。魔法使いと僧侶だ。
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