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(4)
そんないちゃラブデートを日々繰り返していると、宮廷より呼び出しが入りました。私は、スティーヴンさまといちゃいちゃするのに大変忙しいのですが。
「聖女ジュリア。そなたの怒りはわかった。どうか、これで勘弁してはもらえないだろうか?」
「陛下、なんのことでしょうか」
「愚息の行動が許せぬというのは理解できる。だがな、ここまで捨て身の訴えをせんでもよかろう」
一体、何をおっしゃっているのでしょう。そもそも前回の謁見の時も思いましたが、私はこれっぽっちも怒ってなどいないのですが。
「こちらに陳情が来ている。聖女さまの破廉恥な姿には目も当てられぬと」
「左様でございますか。ですが、あれはすべて殿下と同じデート形態でして」
「わかっている。あれだけの痴態を演じておきながら、離宮で軟禁とは温すぎる、いつになったら厳罰に処すのかと言いたいのであろう?」
「いえ、別に」
いや、本当に、まったく全然、これっぽっちも興味がないのですが。正直、今名前を出されるまで脳内にもいませんでしたし。
「スティーヴンからも話は聞いておる」
「はあ」
「聖女ジュリア。やはり筆頭聖女のそなたが、そこらへんのクズ男をヒモとして飼うのは外聞がよろしくないのだ」
一体、なんの話ですかね? 愛があればお金なんてみたいな話は確かにしましたが、いつから私がクズを養うことに? まあ確かに、私の理想の王子さまがクズであることは否定できませんが。
「ここはひとつ、スティーヴンと結婚してだな。表向きは王族に嫁入り、別宅でヒモを養うという形で妥協してはくれんかのう」
「……それは、スティーヴンさまが陛下にそう進言されたのですか?」
「う、うむ。そなた、心を寄せる特定の相手が既にいるのではないか。恋愛解禁を求めたというのも、愚息への当て付けだけとは思えぬ。しかし恋人の影がないということは、表に出せない身分の相手ではないかとスティーヴンが心配しておる。こんなことを言えた義理ではないが、我々もそなたが幼い頃から家族として過ごしてきた。幸せになって欲しいのだ」
「……なるほど、よくわかりました。恋愛する権利を得たからには、契約結婚や建前上の結婚など絶対にごめんだとスティーヴンさまにお伝えしてくださいませ。これにて、失礼させていただきます」
スティーヴンさま、許すまじ! 勝手に御前を退くことは許されないはずですが、陛下は顔をひきつらせたまま私に声をかけることはありませんでした。
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