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 謁見の間からの帰り道、王城の庭園にてスティーヴンさまが侍女たちに囲まれているのが見えました。出るとこ出て、引っ込むところは引っ込んだ選りすぐりの美女たちです。自分の貧相な体つきと比べると、苛ついてきます。 「ちっ」  腹が立ったので、周囲の草花を一気に活性化させて花まみれにさせてやりました。冬を前に心細い思いをしていた虫たちも、きっと大喜びでしょう。あのような女心のわからぬ顔だけ男は、虫まみれになってしまえばよいのです。  ふんす、ふんす。鼻息荒く、足音高く歩いていれば、ドレスの裾を踏んですっ転んでしまいました。お気に入りのドレスが無惨に破れています。淑女とは思えぬとんだ失態です。 「痛い……」  ちょうど誰にも見られていないので、さっさと神殿に帰ってしまえばいいのです。それなのに、どうしてでしょう。こんなに寂しく泣きたい気持ちになるのは。  バカみたいな行動をしてしまう子どもだから、いつまで経っても「小さなお姫さま」以上の相手にはなれないのでしょうか。  バカップルごっこの最中のスティーヴンさまなら、転んだ私をお姫さま抱っこしてくれるでしょうに。 「大丈夫かい?」  そうそう、きっとこんな風に……って、え? 「庭にいたら、向かいにジュリアちゃんがいるのを見つけたんだけれど、すっ転んだままだから心配になってね。聖女には回復魔法が効かないから、このまま僕の部屋に戻って治療をしよう。跡が残ってもいけない」 「……イヤです」 「どうしたんだい」 「バカップルごっこはもう結構です。恋愛解禁だなんだって言ったって、結局のところ好きなひとに気持ちが伝わらなければ寂しいだけだって、よくわかりました! どうせ私は誰にも愛されず、政治の駒として誰かに嫁がされるのがお似合いなんですよ!」  私の言葉にスティーヴンさまが、とても悲しそうな顔をします。何を勝手に哀れんでくれちゃってるんですか。 「そもそも、私が不幸になった原因のひとつは、スティーヴンさまだってわかってますか!」  私の魂の叫びに、スティーヴンさまが目を丸くされました。
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