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夏実は可哀想な子どもだった。親からは居ないものにされ、友人からは汚物として扱われた。助け舟も運航しておらず、一人遊びだけが夏実を慰めた。
おかしな世界から一秒でも早く抜けたいと、そこら辺の男に着いていった結果がこの様だ。
夏実の人生は誰から見てもぐちゃぐちゃだった。憐れで悲惨だった。そんな人生に揉まれ、夏実の心は崩壊寸前だった。
だから、夏実は考えたのだ。この世界はゲームで、自身はどこか別の星から来たプレイヤーなのだと。
これは、人間の振りをして生きるだけの簡単なゲーム。
そう考えた方が、幾分か楽だった。
ーーなんて思案した記憶は残されているが、果たして今の私がその時と同じ夏実なのかは分からない。分からなくなった。
今はただ、与えられたミッションをこなすだけだ。たった一つのクリア条件を達成するまで。〝体が死ぬ〟その時まで。
残り時間ーー約80年。
さて、今日も人間の振りを続けよう。
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