オイラは陽気なレッドキャップ

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 地下室を抜け出す。  日はまだ昇っていない。  夜空を見上げれば、薄っすらと星々が見える。  そんな景色を見て、彼は大きく欠伸をした。  眠気眼を擦る。  ふと、視線を下に向けると、そこにある物が映った。  それは黒い影のような物だ。  まるで人の手のような形に見える。  しかし、それを見た彼は驚く様子もない。  それもそうだ。  彼にとっては見慣れた光景なのだから。  彼はスマホでニュースサイトを開き、世の中の情報を仕入れる。  ヨーロッパでの戦争のニュースがある。彼の出身はスコットランドなので、決して近い訳ではないが、無関係でもない。 「何の因果か日本に来た。いや、生まれちまったかな。どっちにしても、故郷が懐かしくなるねえ」  政治家の宗教との癒着のニュースに、交通事故のひき逃げニュース。  日本の南、小笠原諸島付近で台風が発生したという情報もある。  近場のトピックスは、公園広場でのホームレス狩り。  警察は何をしているのか。  相手がホームレスだから本気で捜査をしていないなどと、ネットでも話題になっていた。  ここ数ヵ月の間に、その近辺で6人もの人間が意識不明の重体にされていた。ホームレスの容態から犯人は複数犯と思われる。 「ん~日本も怖いねえ。今日は町で寝泊まりするかな」  スマホを操作し、地図アプリを開く。  画面に映し出されたのは、その町の全体図。赤いピンが刺された場所が公園だ。  その場所に行くにはどうすれば良いかを調べる。使い方がイマイチ分からなく、四苦八苦する。 「最近は幽霊でもビデオを使って呪い殺したり、地獄の必殺仕事人がインターネットを使う時代なんだからな。妖精もちゃんと使いこなせ……っと! おお!」  ようやく操作方法が分かり、目的地までのルートが表示される。
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