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報告
「ジャック!しかっりして!ジャックッ!!」
「もしもしッ!?救急車お願いしますッ!!」
雨が降り頻る中、アイラは倒れて意識の無いジャックを膝に乗せ必死に呼び掛けていた。
近くに立つアルフィーはスマホで救急車を呼んでいる。
「なんでッ!?急に消えたと思ったらッ!何でこんな所で倒れてるのッ!?」
アイラとアルフィーの前で儀式を行っていた筈のジャックは、二人の目の前で煙りの様に消えていた。
二人は驚愕しながらも直ぐに辺りを捜索すると、ジャックは公園のパーゴラで倒れていたのだ。
「救急車十分掛かるって!!」
アルフィーは雨音に負けないようアイラに叫んだ。
「救急車直ぐに来るから!しっかりしてジャックッ!!」
土砂降りの中、アイラとアルフィーに不安が襲い掛かる。
同日 3:03 PM
犯罪捜索部門
オリバーのデスクで電話が鳴った。
「はい、こちら犯罪捜索部門」
『あの、そちらジャック刑事の担当部署で合ってます?』
オリバーに電話を掛けたのは、アイラだった。病院内の公衆電話からだ。
アイラの格好は雨に打たれてずぶ濡れのまま。
病院で貸してもらったタオルで髪を拭きながらジャックの担当部署かを確認する。
「お宅は?」
オリバーは相手の身元を確認しようとアイラへ尋ねた。
『あぁごめんなさい!名前はアイラ、前に一度そこへ行っていてジャック刑事の友達で……』
「ああ!君か!」
『ええそう!……えっと、誰?』
アイラは警察の誰と通話しているのか分かっておらず顔をしかめた。
「僕だ!オリバー!確かにここで一度会ってる!」
『ぁあオリバー刑事どうも!それで連絡したのはジャック刑事の事で……』
オリバーの事を何となく思い出したアイラだったが、頭の中は「早く要件を伝えなければ」の想いでいっぱいだった。
「ジャックなら捜査で外に出てるよ。そいえばまだ戻ってこないな……?」
『ええ実はその事で……そのジャック刑事が捜査中に倒れてしまって、あぁでも大丈夫!今病院で休んでいるので……』
「またか……」
オリバーは俯き手で頭を抱えた。
『また?彼……そんなにしょっちゅ?』
「あぁ……ちょっと待って」
オリバーは自分の声が入らない様、受話器の下部分を手で塞いだ。
「フレックス警部!ちょっと……」
「?」
オリバーはデスクに座っているフレックスを呼んだ。
「どうした?」
「『ジャックが捜査中に倒れた』って、ジャックの友人から連絡が……」
「またかッ……」
オリバーの報告でフレックスの機嫌は一気に悪くなった。
「取り敢えず、今日はこのまま退署で良いですかね?」
「一生戻ってくるなと伝えておけッ!」
吐き捨てると、フレックスは再び自分のデスクへと戻って行った。
「……了解」
「やれやれ」と言った感じのオリバーは、塞いでいた受話器の手を離した。
「もしもし悪いねお待たせ!ジャックの様子は?彼はそこに?」
『いえ、まだ眠ってて……もう一人、友人のアルフィーが彼の側に付いてくれています……』
「かなり悪そう?」
オリバーの声はトーンが下がっていた。
『まだよく……ただ血糖値が以上に低くて『ハンガーノック』っていう症状とよく似ているって……あのオリバー刑事聞いても?』
「?」
『ジャックは、これまでも捜査中に倒れたりしていたのですか?』
「んぁ――本人は持病だって……」
『ずっと、倒れるまで儀式をしてたってこと……』
アイラは手で額を押さえながら小さく囁いた。
「何?大丈夫?」
アイラの言葉が聞き取れずオリバーが聞き返した。
タイミング……
『アイラ――!神父様が目を覚ましたよ!!』
病院のフロアをアルフィーが嬉しそうに走って来た。
その声がオリバーにも聞こえてくる。
『本当ッ!?あぁ刑事さんジャックが目を覚ましたらしいのッ』
「良かった!ならジャックに『今日はもう家で休め』って伝えてくれるかな?」
「ええ伝えるわ!ありがとうオリバー刑事!」
「いや良いんだ!それじゃまッ」
そこで通話は切られた。
「………………」
オリバーは顔を左右に振りながらタメ息を吐く。
「また今度……」
呟きながら受話器を置いた。
3:40 PM
病室
「ジャックッ!」
アイラは逸る気持ちでジャックのいる病室の扉を開けた。
「嬢ちゃんも青年も病院内は走るな!」
「良かったッ!」
ベッドで点滴に繋がれたジャックにアイラは抱き付いた。
「アイラ、気持ちは分かるけど君びしょ濡れだよ!僕だって我慢したのに!」
アイラの後ろからアルフィーが注意を促す。
「ごめんなさいジャック!忘れててッ」
「いや良いさ、それよりほんと悪かった調査の途中で……」
ジャックは申し訳なさそうにアイラとアルフィーを見る。
「ジャック約束して!もうあの儀式は二度とやらないって!」
「だがその儀式でかなり重要な情報を視れた」
「ジャックッあなた倒れたのよ!それともエクソシストはみんな倒れるまで、あの儀式をしてるの!?」
アイラは興奮気味にジャックへ尋ねる。
「まさか、あれはエクソシストの教えじゃない!あれは……俺の師匠から教わったものだ」
「師匠は倒れるまでやれって!?」
「まぁ…………一年に一度程度なら?」
「神父様こないだやったばっかりだ!」
「アナタ死にたいのッ!?」
「分かったもうやらないッ!……暫くは」
アイラとアルフィーは呆れ顔で顔を見合せた。
「で、早速視た内容を話そうと思ったんだが……その前に二人はシャワーを浴びた方が良いな」
ずぶ濡れの二人を見てジャックは苦笑いを浮かべた。
二人は格好を改めて確認する。
「平気だよ!話して!」
「大丈夫よ!この程度」
二人は一斉に抗議の声を上げたが、ジャックは微笑のまま首を横に振る。
「明日な」
ジャックの一言に二人は不満を隠せないでいたが……
「じゃあ……また明日ね神父様」
「ああ、また明日」
「待っていても話してくれなさそうだ」と二人は諦めて帰ることにした。
アルフィーが病室の扉を開け、アイラも続くが何かを思い出したようにジャックへと振り返る。
「オリバー刑事が『今日はもう家で休め』って……」
オリバーからの伝言を伝えた。
「そっか、ありがとう嬢ちゃん」
ジャックの言葉にアイラは微笑と退出後、病室の扉を静かに閉めた。
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