土の中

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土の中

「ちょっとッ!止めなさいッ!!」 アイラへ向かい問答無用で土を掛けてくる男達。 そのスピードは徐々に上げられてゆく。 男の一人はアルフィーが乗ったままの脚立を上へと引き上げ始めた。 「止めてッ!!」 アルフィーは恐怖から思わず手を離すと脚立から穴の底へと落ちていった。 「ッ――……!」 「アルフィーッ!?」 アイラがアルフィーの側へ駆け寄る。 「アイラどうしようッ!?あの幽霊達ッ僕達のこと生き埋めにしようとしてるッ!!」 「冗談じゃないわッ!!」 アイラとアルフィーが喋っている間も土は止まらず掛けられ続けた。 霊達は早送りの様に異様なスピードで動き始めた。 「いいわ、土が上がってきたら埋められる前に地上へ脱出しましょッ!」 「分かッアアアアッ!?」 「アルフィ――ッ!?」 アイラの提案を聞いていたアルフィーが突如叫びを上げた。 見れば土の中から灰色の手が伸びており、その手がアルフィーの両足を強く掴んでいた。 更に土の中から灰色の顔が生首の様に現れる。 その顔は地上で土を掛けていた男の内の一人だった。 「ヤダ離してッ!離してよッ!!」 「離しなさいッ離すのッ!!」 首だけの男は無表情のままアルフィーの足を土の中へと引っ張っていた。 アルフィーは足をバタつかせ、アイラは土から伸びる男の手を必死に足から引き剥がそうとした。 「離なしッキャアアッ!?」 「アイラッ――!?」 霊の手を引き剥がそうとしていたアイラは土の中へ引っ張られる様に、一瞬で姿を消してしまった。 「アイラッ!?アイラッ――!!そんなッ!」 アルフィーの目からボロボロと涙が零れてゆく。 「ウアアアアッ!?」 アルフィーの足が更に強く引っ張られた。 下半身は既に土の中に埋もれてしまっている。 「助けてッ……助けて神父様ッ!!」 アルフィーはその場にいないジャックに助けを求め叫んだ。 (精神で負けさえしなければ、勝機は必ずある!) アルフィーの脳裏に、ジャックと初めて会った日の事が鮮明に蘇った。 「ッ!」 アルフィーは零れる涙を腕で拭くと、ジャックから貰った十字架のネックレスを握りしめた。 「精神で負けさえしなければッ勝機は必ずあるッ!!」 アルフィーは強く言葉に出すと、十字架のネックレスを霊の手に強く押し付けた。 「ギアアアアアアッ!?」 押し付けたと同時に十字架から眩い光りが放たれる。 光りは灰色の手や地上の霊達さえも一瞬で呑み込み、その光がおさまると霊の姿は全て消え去っていた。 「ハァ………………アイラッ!!」 アルフィーは土の中へ消えたアイラを助け出さなければと手で土を掻き出し始めた。 「アイラッ大丈夫だから!!今助けるからッ!!」 堪えていた涙は今度こそ滝のように流れていた。 それでも土を掘る手は止めず、息もつかぬままアイラが埋められたであろう場所を必死で掘り続けた。 「お願いだよアイラッ!出てきてよッ…………アイラァァ!!」 アルフィーが叫んだ瞬間、土の中から伸びた手に再び足を掴まれた。 「はッ離してッ!!」 「ゥヴんぅあ――――ッ!!」 「ァ!?……ァアイラッ!?」 土の中から手と首より上だけが出たアイラ。 手を伸ばしアルフィーの足を掴んでいたのもアイラだった。 「ゲッホゴホッコホ!ハァ――ッ!!しぃ……死ぬかと思ったッ!!」 「アイラッ――――!!」 アルフィーは喜びを爆発させると、首だけのアイラを抱きしめた。 「ぁあアルフィー……そうね助かったのは嬉しいんだけど、ここから出られたらもっと嬉しいかもッ」 「あぁそうだね待って今助けるから!」 アルフィーはアイラの周りの土を懸命に掘り進めた。 数分後…… 「ハァ……本当に助かったわアルフィーありがとうッ!」 「ホントに良かったッ!」 アルフィーの助けで土の中から脱出したアイラ。 二人は安堵しながら改めて生還の包容を交わした。 「それと、さっき埋められた時に触れたの……」 「触れたって?」 「布だと思う」 「それって……」 アルフィーが期待の表情でアイラを見るとアイラは無言で頷いた。 二人は顔を見合せた後、アイラが先程まで埋められていた場所を手で掘り進めた。 「ハァハァッ…………これッ!?」 「ハァッハッ……いた!見つけたよアイラ!!」 土の中から茶色に染まったボロボロの布が現れた。 二人は布の上に被っている土を丁寧に払ってゆく。 全て払い終わる頃には、大人一人と子供二人分の大きさの布が現れた。 「良かった……やっと、見つけられた」 「そうね……」 二人は布に残ったわすがな土を優しく払いながら、発見出来た事に安堵した。 「警察に連絡するわね」 「うん」 アイラはズボンのポケットからスマホを取り出すと、遺体を発見した事を伝えるべく警察に電話を掛けた。 「もしもし、警察ですか?実は……」 アイラが穴の中から警察へ電話をしていると…… 「ニャアァ……」 「!?」 地上から猫の鳴き声が聞こえてきた。 アルフィーは鳴き声に気が付くと上を見上げる。 「アーサーッ!?」
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