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拾ったイチョウの葉を空に向ける。
空は少し陽が傾きかけ、オレンジに染まりはじめていた。
「どんぐりや松ぼっくりを拾って工作したり。そういえばこの季節って、色々遊んだなって」
「……そうだったかもな」
私が散らかした落ち葉を、先輩も一緒に片付けてくれる。
さっきの攻撃に、怒る事もしない。
「……優しいよなぁ」
「何か言ったか?」
「何でもないです」
伊村先輩とは美化委員でしか接点はない。
美化委員っていうのは、花の寄せ植え、草むしりにゴミ拾い。
ハッキリ言って地味でめんどくさい仕事が多い。
委員活動のたびに、どうしたって誰からともなく文句が出てくる。
だけど先輩は。
ただ一人、文句を言わず。いつも黙々と作業する。
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