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夏休み始まってすぐの頃。草むしりの活動があって、汗だくになって作業した。
梅雨に充分水分を補ったからか、雑草は強く、逞しく。
梅雨が明けてしまった乾いた土に、しっかりと根付いていた。
照りつける太陽を背に受け、私は花壇の雑草を抜いていた。
汗が額から首から、とめどなく流れる。
——あぁ、もう!やってらんない
そう思った時、横から紙コップが差し出された。
「伊村、先輩?」
「……あそこに、先生が用意してくれたお茶とか、スポーツドリンクあるから。こまめに水分補給して」
先輩に促された方を見れば、長テーブルが置かれていた。紙コップや水筒が置かれている。
横にはクーラーボックスも置かれている。
「あ、ありがとうございます」
私は先輩からコップを受け取り、喉を潤した。
スポーツドリンクの甘さが、汗を流した体に沁みる。
「ここはもういいよ。あとは俺がやるから。そのコップ片付けたら、あっちの草むしりお願い出来るかな?」
「あ、はい。わかりました」
先輩に言われた場所へ、私は素直に移動した。
そこは、日陰になっていた。
先輩が気を遣ってくれた事に気づいて振り返ると、黙々と作業をすすめていた。
日向の作業はつらい。
なのに文句も言わず、誰より手を動かしていた。
ふと、額の汗を拭うため空を見上げた先輩は、とても輝いてみえた。
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