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「今のアレクの一撃をご覧になりましたか、ユリア様!」
珍しく少し大きな声を上げるジョンの横で、私は思った以上のアレクの活躍に内心でびっくりしている。
『氷の城の女主人』という役でなければ、両手を叩いて、ジョンの数倍大きな声をあげたかったくらいに。
「勝者、アレクシス!」
審判の鋭い声が上がる。アレクの剣は、へたり込む相手騎士の眼前でぴたりと止まっていた。
「今のなど、剣筋が見えぬくらいでございました」
「そうね」
ジョンの言葉は大袈裟だけれど、相手騎士を翻弄するアレクの剣はとにかく疾く、しかし当たれば力強く相手の剣を押し返す。
いつのまにこんなに剣の技術が身についていたのかと、驚いてしまう。
今回の剣術大会は、ユリアに魔獣退治を依頼している領主が主催のこじんまりとした大会なので、出場しているのも近隣の騎士見習いの少年から青年達。その中だからかもしれないけれど、ここまでは向かう所敵無し、という感じ。
やっぱりウチの子、天才では?
「ユリア様、勝ちました!」
観戦席に駆け寄り、嬉しそうにそう報告してくれるアレク。
「ここまでは見事だったわ」
「ありがとうございます!」
元気よく返すアレクの肩越しに、次の対戦相手の姿が見えた。白いシンプルな鎧を纏う金の髪の少女。遠目でもわかる整った顔立ちと、この距離なのに首筋がちりっと灼けつくような強い魔力。
もしかしたら、ミスミの仕込みはこの子の為に……?
「ユリア様、じゃあ俺、行ってきますね!」
ジョンから受け取った水を一気に飲み干してアレクはそう言うと、対戦相手の元へ向かう。
「あっ、アレク!」
思わず呼び止めてしまった。私は振り返ったアレクに、なんと声をかけて良いのか迷い、結局一言。
「最後まで気を抜かないように」
とだけ投げかける。
アレクはただ、笑顔で大きく頷いた。
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