僕が○にたいと言わない理由

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 もう朝だった。  僕はちゃんと布団に寝ていたし、いつも寝るときに着ていたTシャツと短パンだった。 「夢……か」  僕は掌で顔を擦る。  そういえば、僕は美里さんなんて人のことは知らなかった。大学に都市伝説研究会なんてあった覚えがないし、ワンカップの日本酒を買ったこともないし、真夜中の公園のブランコで酒を飲んでいたこともない。  だから、全部夢なのだ。さっきのことは全部、僕の想像力が作り出した幻なんだろう。そう思って、僕は掌を顔から離す。  僕の視線が凍りつく。  彼女に掴まれた手首、その手の痕が、真っ赤になって残っていた。
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