僕が○にたいと言わない理由

　その後、お祓いに行ったりしたけど、何も憑いていない、ストレスから見た夢じゃないかと言われたし、その後怪奇現象に遭遇したことはない。
　もしかしたら、手首の痕だって、自分が付けたものだって可能性はある。首を絞められる夢を見ていて、実は自分の手が首の上に乗っていたという話はよく聞くし。
　あるいは、そんなにタチの悪い怪奇現象ではなかったのかもしれない。僕が大したことない理由で○にたい○にたいと喚いていたのがウザいと思って、脅かすために現れたのかも。

　でも、僕はもう、二度と○にたいとは言わないんだ。
　もう一度言えば、あの女が自分の前にまた現れるかもしれない。今度は逃げられないかもしれない。
　あの女とできる限り距離をとって、捕まえられないためには、二度と○にたいと言わないでいるほかはない。

（了）