2/3
86人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
 ――佑センパイ 装備とかってどうしたらいいっすか?    職場のリモートワーク用のアプリ内に勝手に作った「山サークル」のチャットに、オレはメッセージを投げる。  ――あれれ? ガマジュン イガラシ補佐とどっか登るのかよ?  あ、倉山だ。    ――そうなんだよちょっと  と、短く応じていると、佑先輩が、サクッと一対一(いちいち)のチャットに切り替えてきた。  ――着るモノはそれなりに準備しといて たぶんもう夜は相当冷えるから  ああ、やっぱそうだよな。  ――あと山中では一泊だけだから露営でいい? ふたりだけだし荷物減らしたいし  えぇぇ? ビバークですか。  うーん、正直シンドイかも。  オレそもそも「ガチ山勢」じゃないし。  ってか、佑先輩。四十越えの身で、元気すぎやしませんかぃ?  ――食料とか消えモノはあっちで調達で。飛行機で荷物になるから  ――ハイ  オレが返事を打ち込むと、佑先輩は、さっさとチャットから離脱していった。 *  その後は。  連休前ならではの、押せ押せワサワサのスケジュールだったコトもあって、佑先輩とのやり取りも絶えてしまった。  で、結局。  オレは、具体的な目的地も知らされないまま、待ち合わせの羽田空港に向かう。  普通、ルートとか地図とかは、事前にパーティ内で、きっかり共有しとくモンなんだよ。色んな準備もあるしさ。天候とかも見ておきたいし。  でも、今回はふたりだしな。  佑先輩だって、連休前の忙しい時期だったろうしさ。  あんまりゴチャゴチャせっつくのもな……って。  ガラス張りに白くて明るい、だだっ広い出発ロビーでキョロついていると、向こうの方で佑先輩が手を振っていた。   「チェックイン済ませといた。預け荷物はないんだろ?」 「ハイ」  そして先輩は、オレに白い紙きれを手渡す。  チケットがわりのQRコードがプリントされていた。    そうそう。事前にチケット用のナンバーやコードも送られてこなかったんだよな。  なんか先輩、「マイルで買う」とか言ってたからさ。  普通とは違うのかなって、ボンヤリ思ってたけど。  オレに知らされてたのは、ホント、フライト情報だけで。  現段階でも分かってるのは、行き先が「新千歳」だってコトだけだった。  で、ほぼほぼあさイチの便。 「朝飯でも食っていくか?」って佑先輩に訊かれて、オレは頷く。  チョイスは「讃岐うどんのチェーン店」と「マック」。  絶妙に迷うけど、コーヒーの気分だったからマックにした。  妙に広々抜け感のある空港での「朝マック」って、なんか旅情を感じるじゃん? *
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!