Overdose

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きっかけなんて今でも覚えている。 あの日。 あの、親と組織に売られそうになった日。 本当に恐怖でいっぱいだった。 自分はこれからどうなるんだろうって。 知らない国に飛ばされて一生訳の分からない仕事させられるのか。 人体実験に使われるのか、臓器でも売り飛ばされるのか。 虫けらみたいに殺されるのか。 ……もう、二度と日本には戻れないのか。 中学生ながらにぐちゃぐちゃと色々考えた。 大人なんて誰一人信じられなくなった。 そして、目の前で沢山人が死んだ。 視界が赤で染め上げられた。 俺自身、誰か殺したかもしれない。 ナイフで何か刺した気がする。 近づいてきた奴に向かって銃口を向けた気もする。 大混乱の中、逃げ出してようやく気付いた。 (あぁ、もう感情なんてめんどくさい) こんなものがあるから辛いんだって。 それから、一切感じなくなってしまった。 あらゆる感情が消失してしまったかのように。 誰かをいじめたって、何とも思わない。 逆に何言われたって何とも感じない。 いいことも悪いことも、全部全部感じない。 言ってしまえばただ人形みたいだ。 表情だけは変わる生きている人形。 まさにぴったりな表現だと思った。
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